狭い通路を見つけたアメーバは、どう動いたのか?

まず平らなガラスの上では、ネグレリアは2種類の「足」を使い分けて這っていました。
1つは、アクチンという繊維がぎっしり詰まった、薄く広がる突起です。
もう1つは「ブレブ」と呼ばれる、細胞の膜が風船のようにぷくっと膨らみ出る突起で、こちらにはアクチンがありません。
生きたままアクチンを映すことはまだできないため、チームは動く細胞を顕微鏡で撮ったあと、同じ細胞を固定して染め、突起の形と中身を照らし合わせました。
その結果、突起の形を見るだけで2種類を見分けられると分かりました。
一つの細胞が両方の突起を同時に出したり、片方からもう片方へ切り替えたりする様子も見られました。
次に、5マイクロメートルのすき間を空けて上からもう1枚のガラスをかぶせると、アメーバはパンケーキのように平たくつぶれながらも這い続けました。
このとき、2種類の突起を出す細胞の割合には、統計的にはっきりした差は出ませんでした。
一方で這う速さは、毎分14.5マイクロメートルから20.5マイクロメートルへと、およそ4割上がっていました。
すき間を3マイクロメートルまで狭めると、95%を超える細胞が破裂してしまい、さすがに押しつぶしすぎだったようです。
そこでチームは、上下だけでなく左右からも細胞を挟む、高さ5マイクロメートル、幅8マイクロメートルの細い通路を使いました。
すると通路の中のアメーバは、3回の実験のすべてで、ブレブだけを使って進んでいたのです。
興味深いのは、アメーバが通路の入り口に出会ったときの振る舞いです。
比べるために調べた別のアメーバ、ディクチオステリウムは、通路の入り口からたびたび離れていきました。
ところがネグレリアは、中に入るまで入り口を探り続け、そこから離れることはめったにありませんでした。
自分の体より細い通路にも、体をねじ込むようにして入り込んでいきました。
そして一度中に入ると、毎分50マイクロメートルを超える速さで、1ミリ以上の距離をほぼ一方向に進み続けたのです。
試した中で最も太い通路でも、中のアメーバは外の細胞の2倍の速さで進んでいました。
フリッツ=レイリン氏は「まるでロボットのよう。ひたすら進んで、進んで、進むんです」と表現しています。
ネグレリアは、狭い所を自分から探り、入ったらほとんど引き返さずに突き進む性質を持っていたわけです。
研究チームはこの「狭い所を求める」傾向を「閉所好き(claustrophilia)」と呼んでいます。




















