脳と結びついていたのは「体重」か「お腹の奥の脂肪」か?

結論から言うと、何年も後の脳の大きさとの結びつきで目立っていたのは、体重の変化ではなく内臓脂肪の減り方のほうでした。
まず追跡時のデータを調べると、内臓脂肪が少ない人ほど、MoCAの点数が高い傾向がありました。
この結びつきは、脳の大きさが比較的保たれている人で、とくにはっきり表れていました。
一方で、体重と身長から計算する肥満の目安「BMI」では、同じような結びつきは見られませんでした。
次にチームは、3つの時点でお腹の脂肪の記録がそろっている295人について、何年にもわたって内臓脂肪をどれだけ抱えてきたかを計算しました。
すると、内臓脂肪を長く多く抱えてきた人ほど、MoCAの点数も、その中の記憶に関わる点数も低くなっていました。
皮下脂肪では、こうした関係は見られませんでした。
さらにチームは、18か月の取り組みの間に減った脂肪の量が、5〜10年後の脳とどう結びつくかを297人で調べました。
この取り組みの間に、内臓脂肪は平均で24%減っていました。
その結果、内臓脂肪を多く減らした人ほど、何年も後の脳全体の体積が大きく保たれていたのです。
内臓脂肪が減った人ほど、灰白質(脳の神経細胞の本体が多く集まり、感覚の処理や体の動き、判断に関わる部分)の体積も大きく保たれていました。
また、お腹の脂肪に占める内臓脂肪の割合が減った人ほど、学習や記憶の中心となる「海馬」が健康な状態に保たれていました。
海馬は、認知機能が衰えるときに最初に影響を受けやすい場所の1つとされています。
これに対し、皮下脂肪の減り方やBMIの変化は、のちの脳の大きさとは結びついていませんでした。
つまり、同じように「やせた」としても、脳との関係で目立っていたのは、お腹の奥の脂肪がどれだけ減ったかだったのです。
脳を3回撮影した188人のデータでは、内臓脂肪を長く多く抱えてきた人ほど、脳のいくつもの場所で縮み方が速くなっていました。
そうした人では、脳の中にある液体で満たされたすき間「脳室」も、より速く広がっていました。
脳室は、まわりの脳の組織が失われるにつれて大きくなる場所です。




















