セメントの蓄電器は、電気と建物を両方支えられたのか?

研究チームはまず、カーボンナノチューブ(炭素原子が筒の形につながった極細の素材)とカーボンブラック(すすのような細かい炭素の粉)、そしてセメントを混ぜ合わせ、3Dプリンターで印刷できる電極用の「インク」を作りました。
そしてこのインクを、小さなコンクリートの板の上に、両手の指を互い違いに組み合わせたような模様で描いていきました。
この「くし形」の模様では、隣り合う電極どうしが横に並んで向き合う形になります。
電極は、セメントモルタル(セメントに砂と水を混ぜたもの)でできたセパレーターの中にすき間なく埋め込まれ、全体がひとつながりの塊になっています。
そのため、電極とセパレーターのつなぎ目がはがれる心配がなくなりました。
では、イオンはどこを通るのでしょうか。
コンクリートの板の中ではセメントが水と反応して固まっていき、そのすき間には水とイオンが満たされます。
このイオンが、隣り合う電極のあいだを楽に行き来できるようになっていました。
くし形にしたことで、イオンは厚みの方向に長く旅する代わりに、隣の電極までの短い距離を横に移動すれば済むようになったのです。
さらにこの形は、電極と電解質(イオンを含み、電気を運ぶ役目をする物質)が触れ合う面積も広げてくれます。
例えるなら、坂の上の遠い家まで毎回登っていたのが、すぐ隣の家へ縁側から渡れるようになったようなものです。
その結果、最適化した蓄電器は、電流密度(面積あたりに流す電流の大きさ)0.46mA/cm²の条件で、1平方センチメートルあたり162.14ミリファラドの静電容量(電気をためられる量の目安)を示しました。
動作させた電圧の幅は1.0Vで、エネルギー密度(ためられるエネルギーの量)は1平方センチメートルあたり22.52マイクロワット時、出力密度(一度に取り出せる電力の大きさ)は1平方センチメートルあたり0.49ミリワットでした。
プレスリリースによれば、イオンの移動距離を短くしたこの設計によって、蓄電器全体の効率は以前のものより高くなったといいます。
では、肝心の強さはどうだったのでしょうか。
このセメントの蓄電器は、23.00メガパスカルの圧縮強度(押しつぶす力にどれだけ耐えられるか)を保っていました。
これは、床の板や階段に使われる市販のコンクリートに匹敵する強さだと報告されています。
つまり、建物の材料としての強さと、電気をためる働きを同時に持てることが示されたのです。
さらに研究チームは、同じコンクリートの板に印刷した3つの蓄電器をつなぎ、小さなLEDの列を光らせることにも成功しました。
灰色のセメントの板が、明かりをともす電源の役目を果たしたわけです。




















