甘いものが、抗生物質で乱れた腸で牙をむく

「抗生物質と食事の食べ合わせ」は存在するのか?
答えを得るために研究者たちはまず、ニューヨークのMSKに入院した患者173人の食事を、約9400食にわたって1品ずつ記録しました。
いずれも、白血病などの治療で、血液のもとになる細胞の移植(造血幹細胞移植)を受ける患者で、数週間の入院中、全員が何らかの抗生物質を使っていました。
病院の食事なら、トレーに添えた用紙に料理ごとの食べた割合を書いてもらうだけで、厨房のレシピから口に入った量をグラム単位で割り出せます。
さらに同じ期間には158人から1000回分あまりの便を集め、腸内細菌の顔ぶれを調べました。
こうすることで、便を採る直前の2日間に何を食べたかと、そのときの腸内細菌の状態を、1回ずつ突き合わせることができます。
すると強い抗生物質(ピペラシリン・タゾバクタム配合剤やセフェピムなどの広域抗菌薬)を使っていた時期では、甘い食べ物や飲み物を多くとっていた人ほど、腸内細菌の多様性が低くなっていることがわかりました。
具体的には、甘いもの(水分を除いた重さ)が1日あたり100グラム増えるごとに、抗生物質による低下に上乗せして、多様性がさらに24%ほど下がる計算です。
そして勢いを増していたのは、やはり腸球菌の一種(エンテロコッカス・フェシウム)でした。
(※一方で強い抗生物質(広域抗菌薬)を使っていない時期には、甘いものの量と腸内細菌の多様性のあいだに、明確な関係は見られませんでした。ただしこのときも予防用の別の抗菌薬が使われている場合は含まれます。)
同様の結果はマウス実験でも得られました。
抗生物質だけのマウスでは、腸にもともといた腸球菌が3日目に100倍から1000倍に増え、6日目にはほぼ元の水準まで引いていきました。
薬が引き起こす腸球菌の騒ぎは、数日でひとまず収まるのです。
ところが砂糖を一緒に与えたマウスでは、3日目の腸球菌の量が、抗生物質だけのマウスの16.3倍に達しました。
差がさらに開いたのは6日目です。
抗生物質だけのマウスでは引いていった腸球菌の波が、砂糖を与えたマウスではなかなか引かず、差は33.4倍にまで広がりました。
砂糖は腸球菌の波を高くしただけでなく、引くのも遅らせていたのです。
一方、抗生物質を使わずに砂糖だけを与えたマウスでは、腸球菌は増えませんでした。
砂糖だけでも、抗生物質だけでもなく、両方がそろったときに異変が大きく長くなっていたのです。
患者の記録から浮かんだ「組み合わせ」の効果が、マウスでそのまま再現されたのです。
では糖はなぜ、抗生物質のあとの腸でだけ、腸球菌をこれほど勢いづかせるのでしょうか。





















