草を刈った原っぱに肥料がまかれると雑草が勝つ

なぜ甘いものと強い抗生物質が合わさると、有害な菌が増えてしまうのか?
鍵となるのは腸内細菌たちの「均衡」です。
多様性の保たれた腸は、草のびっしり茂った原っぱのようなものです。
たくさんの種類が場所を分け合っているため、特定の1種類だけがはびこることはなかなかできません。
抗生物質は、この原っぱの草をまとめて刈り取ってしまいます。
刈り跡で真っ先に勢いづくのは、刈り残された根の強い雑草、腸でいえば腸球菌です。
そこへ肥料がまかれれば、雑草は伸び放題になるでしょう。
研究チームのウィリアム・ジョギア氏(ニューヨーク大学ランゴン・ヘルス)も、抗生物質を生き延びた有害になりうる細菌が、食事の糖を使って増えているのだろうと述べています。
それを確かめるため研究チームは、糖と腸球菌だけで話が済むのかを見るため、細菌をまったく持たない無菌マウスの腸に、腸球菌の一種(エンテロコッカス・フェカーリス)だけをすまわせる実験も行いました。
糖がただの肥料なら、ライバルのいないこの腸でも、砂糖を与えれば腸球菌はもっと増えるはずです。
実際には、砂糖を与えても、腸球菌の増え方に意味のある差は出ませんでした。
糖が腸球菌を後押しするには、抗生物質で荒らされた「ほかの細菌たち」がまわりにいる必要があるらしいのです。
今回の研究は人間の患者の腸内細菌の多様性を調べつつ、マウス実験で原因を探るというハイブリッド実験であり、全ての結果が人間にそのまま当てはまるわけではありません。
それでも、甘いものと強い抗生物質がそろったときに腸内細菌の乱れが大きくなるという現象そのものは、患者の記録とマウスの実験の両方で一致しています。
論文も、食事に含まれる単純な糖を、抗生物質による腸内細菌の乱れを増幅させる「変えられる要因」と位置づけています。
またこの結果は、病院のある習慣とぶつかります。
移植を受ける患者は、抗がん剤の副作用で口やのどがただれ、吐き気や食欲不振に苦しみます。
それでも体は回復のために多くのエネルギーを必要とするため、糖分の多い栄養補助の飲み物がよく勧められてきました。
今回、抗生物質と重なったときに多様性の低下と強く結びついていた甘いものの中には、スポーツドリンクや栄養シェイクといった飲み物が入っていたのです。
先にも述べたように移植患者では、腸内細菌の多様性が失われていると亡くなるリスクが高まることも、研究チームのこれまでの研究で分かっています。
ファン・デン・ブリンク氏は、入院患者に勧めているこうした飲み物の多くは糖分が多く、抗生物質を処方するときにはその点も考える必要があると述べています。
MSKのジョナサン・ペレド氏は、短い期間だけ食事を変えることで患者の経過が良くなるのかを確かめる臨床試験が、次の重要な一歩になるとしています。
では一般の人が抗生物質を処方されたときも、甘いものは控えたほうがよいのでしょうか。
論文は、抗生物質を使う人全般について、糖を控えれば腸内細菌のダメージを和らげられるかもしれないと結んでいます。
(※なお今回の知見は研究段階のものであり、実際の食事は医師の指導に従ってください。)





















