トカゲが切り落としたしっぽの化石は、これまで一つもなかった

自分で切ったと言い切れるしっぽの化石は、あるのか?
実は、これまで一つも見つかっていませんでした。
いまのトカゲが切ったしっぽなら、博物館にも、生き物好きの家の標本瓶にも残っているのに、です。
研究者たちが手にしてきたのは、しっぽそのものではなく、しっぽを切る「しかけ」や、切れたあとに生え直した跡でした。
しっぽ切りの技は、2億4000万年以上前に現れたトカゲやヘビの仲間(有鱗目)の共通の祖先の段階で、すでに備わっていたと考えられています。
その手がかりの一つが、化石の骨に残るミシン目です。
ミシン目そのものは、さらに古い化石からも見つかっています。
トカゲの仲間が現れる前の遠い親戚、約2億8900万年前の爬虫類カプトリヌス(Captorhinus)では、しっぽの骨の真ん中に、いまのトカゲとよく似たミシン目がありました。
ところが、骨のミシン目は、しっぽを切った証拠としては不十分です。
まず、ミシン目があっても、それを実際に使っていたとは限りません。
同じころに水辺で暮らしていた爬虫類メソサウルスのしっぽの骨にも、ミシン目らしきものがあります。
しかしこれについては、使われないまま残った名残だとする研究や、そもそも骨のつくりの違いを見誤ったものだとする研究が出ています。
さらに、ミシン目のところで外れたしっぽの骨が見つかったとしても、自分で切ったとは言い切れません。
ミシン目はもともと外れるための場所なので、死んだあとに体が崩れるときにも、そこで外れることがあるからです。
生え直したしっぽの化石も、しっぽを失ったことは教えてくれますが、自分で切ったのか、かみ切られたのかまではわかりません。
決め手になるのは、骨ではなく、切り口の筋肉が作る花びら形の輪です。
ところが生き物が死ぬと、筋肉や皮膚のようなやわらかい部分は、微生物に分解されてすぐに消えてしまいます。
背骨のある動物の化石が、ほとんど骨や歯ばかりなのは、そのためです。
しっぽ切りを化石で確かめるには、切り口の筋肉の形まで残った、切り落とされたしっぽが必要でした。
そんなしっぽが、何千万年も残る場所はあるのでしょうか。




