人はなぜ見知らぬ誰かのために動くのか

人は、見知らぬ相手とも協力し、みんなのためになることに力を出す、珍しい生き物です。
こうした行動は、専門家の間で「社会のための行動(向社会的行動)」と呼ばれています。
なぜ人がここまで協力的になったのかは、生き物の進化を研究する学者たちを長く悩ませてきました。
説明の一つとして挙げられてきたのが、知能です。
筋道立てて考える力や他人の立場に立つ力が、倫理的な考え方を育て、思いやりにつながるという考えです。
実験では、知能の高い人ほどよく協力し、自分も含めた全員が得をする形にたどり着きやすいとの報告もあります。
一方で、知能の高い人は収入や地位も高くなりやすく、お金や時間を出す負担が軽いだけだ、という見方もあります。
ただ、これまでの証拠の多くは短い実験ゲームや本人が答えるアンケートによるもので、ゲームの結果は割れていました。

選挙に行ったかを尋ねると、実際より多めに答える人が出るのは、よく知られた問題です。
そこで2人は、知能も行動も、本人の申告に頼らない記録で測ることにしました。
知能の物差しにしたのは、兵役の入隊検査で受ける知能テストの得点です。
対象は、1969〜1997年に入隊検査を受けた人たちです。
男性は120万人を超え、女性も約3,000人いました。
当時、男性の検査は義務で、各年に生まれた男性の9割以上が18〜19歳で受けていました。
テストは論理・言葉・空間・機械の理解の4分野からなり、結果は9段階で付けられました。

真ん中の5段階目は、IQ(知能指数)でいえば96〜104ほどにあたります。
いちばん上の9段階目は、IQ126を超える水準です。
しかも、成績が良いほど兵役で希望の配属になりやすかったため、やる気の差で得点がゆがむおそれは小さいと考えられています。
この得点は、50〜65歳で受けた似たテストの得点とも強く結びついていました。
つまり、若いころの1回のテストでも、大人になってからの知能をよく映していると考えられるのです。




