知能の高い人ほど、寄付や選挙の投票をよくしていた
知能の高い人ほど、寄付や選挙の投票をよくしていた / 封筒に入れた投票用紙を、係の人が封をした投票箱に入れているところです(2024年の欧州議会選挙、スウェーデン・ブラスタッドの投票所)。研究で調べたのは2009年の欧州議会選挙で投票したかの記録で、この写真はそれより後の選挙のものです。 Credit: W.carter / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、16:9 に切り抜いて表示)
psychology

知能の高い人ほど、寄付や選挙の投票をよくしていた

2026.10.23 10:30:00 Friday

コンビニのレジ横に置かれた募金箱へ、おつりの小銭をそっと入れていく人がいます。

寄付や投票は、自分のお金や時間を差し出す行動で、ほかの人のためにもなります。

では、頭の良さは、こうした行動とどう関わっているのでしょうか。

「頭のいい人ほど計算高く、損な行動は避けそうだ」と思う人もいるかもしれません。

経済学者のミカエル・エリンダー氏とオスカー・エリクソン氏は、この問いに大規模なデータで挑みました。

使ったのは、スウェーデンの約120万人分の公的な記録です。

研究の詳細は、2024年11月29日付で学術誌『The Economic Journal』に掲載されました。

Intelligence predicts charitable giving and voting in massive Swedish study (PsyPost) https://www.psypost.org/intelligence-predicts-charitable-giving-and-voting-in-massive-swedish-study/ コトバンク「双生児法」 https://kotobank.jp/word/%E5%8F%8C%E7%94%9F%E5%85%90%E6%B3%95 コトバンク「知能指数」 https://kotobank.jp/word/%E7%9F%A5%E8%83%BD%E6%8C%87%E6%95%B0 ウプサラ大学「Intelligence linked to behaviors that benefit society」 https://www.uu.se/en/department/housing-and-urban-research/news/archive/2025-05-21-intelligence-linked-to-behaviors-that-benefit-society Simply Psychology「Fluid vs. Crystallized Intelligence」 https://www.simplypsychology.org/fluid-crystallized-intelligence.html
An inquiry into the relationship between intelligence and prosocial behavior: Evidence from Swedish population registers https://doi.org/10.1093/ej/ueae105

人はなぜ見知らぬ誰かのために動くのか

いろいろな慈善団体への寄付を受けつける募金箱です(香港国際空港、2018年)。こうした場所での寄付も、見知らぬ相手のためにお金を出す行動のひとつです。
いろいろな慈善団体への寄付を受けつける募金箱です(香港国際空港、2018年)。こうした場所での寄付も、見知らぬ相手のためにお金を出す行動のひとつです。Credit: Donald Trung / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

人は、見知らぬ相手とも協力し、みんなのためになることに力を出す、珍しい生き物です。

こうした行動は、専門家の間で「社会のための行動(向社会的行動)」と呼ばれています。

なぜ人がここまで協力的になったのかは、生き物の進化を研究する学者たちを長く悩ませてきました。

説明の一つとして挙げられてきたのが、知能です。

筋道立てて考える力や他人の立場に立つ力が、倫理的な考え方を育て、思いやりにつながるという考えです。

実験では、知能の高い人ほどよく協力し、自分も含めた全員が得をする形にたどり着きやすいとの報告もあります。

一方で、知能の高い人は収入や地位も高くなりやすく、お金や時間を出す負担が軽いだけだ、という見方もあります。

ただ、これまでの証拠の多くは短い実験ゲームや本人が答えるアンケートによるもので、ゲームの結果は割れていました。

昔ながらの緑色の記入台です(2024年の欧州議会選挙、スウェーデン・ブラスタッドの投票所)。研究では、選挙で投票したかを本人に聞かず、実際の投票の記録で確かめています。
昔ながらの緑色の記入台です(2024年の欧州議会選挙、スウェーデン・ブラスタッドの投票所)。研究では、選挙で投票したかを本人に聞かず、実際の投票の記録で確かめています。Credit: W.carter / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

選挙に行ったかを尋ねると、実際より多めに答える人が出るのは、よく知られた問題です。

そこで2人は、知能も行動も、本人の申告に頼らない記録で測ることにしました。

知能の物差しにしたのは、兵役の入隊検査で受ける知能テストの得点です。

対象は、1969〜1997年に入隊検査を受けた人たちです。

男性は120万人を超え、女性も約3,000人いました。

当時、男性の検査は義務で、各年に生まれた男性の9割以上が18〜19歳で受けていました。

テストは論理・言葉・空間・機械の理解の4分野からなり、結果は9段階で付けられました。

入隊検査の知能テストの結果を、9つの段階に分けて表す目盛りの図です。真ん中の5はIQの平均100を含む水準で、右へ行くほど得点が高いことを表します。
入隊検査の知能テストの結果を、9つの段階に分けて表す目盛りの図です。真ん中の5はIQの平均100を含む水準で、右へ行くほど得点が高いことを表します。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)

真ん中の5段階目は、IQ(知能指数)でいえば96〜104ほどにあたります。

いちばん上の9段階目は、IQ126を超える水準です。

しかも、成績が良いほど兵役で希望の配属になりやすかったため、やる気の差で得点がゆがむおそれは小さいと考えられています。

この得点は、50〜65歳で受けた似たテストの得点とも強く結びついていました。

つまり、若いころの1回のテストでも、大人になってからの知能をよく映していると考えられるのです。

次ページ得点の高い人ほど多かった「3つの行動」とは?

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

心理学のニュースpsychology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!