双子で比べても、差は消えなかった

ただし、ここまでの結果は、知能が行動を生んだという証拠にはなりません。
得点の高い人は、豊かな家庭や、市民としての務めを大切にする地域で育っていたのかもしれないからです。
そこで2人は、双子5,786組に絞った比較を行いました。
双子はふつう同じ家で育ち、遺伝子の多くも共有しているため、育ちの違いの影響をかなり取り除けます。

2人は、片方がもう片方より得点の高い組に注目しました。
さらに、入隊時の面接で評価された、情緒の安定や社交性といった性格の違いも考慮しました。
その結果、得点の高い側のほうが、一貫して寄付も投票もよく行っていました。
同じ得点差で比べると、寄付をする確率は26%、投票する確率は13%高かったのです。
エコカーを持つ確率も13%高くなっていました。
全体で見たときより数字は小さく、研究者は、全体の数字には家庭などの影響がかなり混じっていたと見ています。

それでも差が消えなかったことは、知能と社会のための行動の結びつきが本物だという見方を強めるものだ、と2人は述べています。
では、知能はどんな道すじで行動につながっているのでしょうか。
2人は、学歴、収入、結婚や子どもの有無、住んでいる自治体を加えて、双子の比較を計算し直しました。
すると数字は少し小さくなったものの、寄付と投票の結びつきは、偶然では説明しにくい差として残りました。

一方、エコカーは増える向きこそ同じでしたが、偶然と区別できるほどの差ではなくなりました。
間に入る要因としては、学校で学んだ年数が主なものだったようです。
学校が社会を大事にする考えを伝えたり、倫理観を育てたりするという見方と、合う結果です。
意外にも、収入は関係をあまり説明していませんでした。
「お金に余裕があるから寄付できる」という説明だけでは、この結びつきは片づけられないようです。
研究者たちは、知能が社会のための行動に直接影響していることを示唆する結果だとしています。

さらに約600人分のアンケートでも、得点の高い人ほど、他人のために尽くそうとする気持ちを強く表していました。
もちろん、これは記録どうしの結びつきを見た研究で、知能が行動を生むと証明したわけではありません。
また、データの中心はスウェーデンの男性で、女性は約3,000人にとどまります。
それでも、知能の高い人ほど、寄付や投票、エコカーの所有といった社会のための行動を実際に多く行っていたことが、記録からはっきり見えてきました。
レジ横の募金箱に入る小銭や、休日の投票所へ向かう足取りの裏には、筋道立てて考える頭の働きがあるのかもしれません。
ここからは、流動性知能と結晶性知能をもっと知りたい人へ
流動性知能と結晶性知能とは、頭の良さを「その場で考える力」と「ためてきた知識を使う力」の2つに分けてとらえる考え方です

流動性知能と対になるのが結晶性知能で、長い年月をかけてためてきた知識や事実、経験を使う力を指します。
たとえば、歴史の出来事や年号を思い出すこと、地名を覚えていること、言葉の数を増やすこと、詩をそらんじることがこちらにあたります。
2つの力は別々にあるわけではなく、結晶性知能は、流動性知能を新しいことの学習に注いだ結果として生まれると考えられています。
年齢とともに変わる様子にも違いがあり、流動性知能は20代後半に最も高くなって、その後はゆっくり下がっていくとされます。ただ最近の研究では、流動性知能の一部は40歳ごろまで最も高くならない可能性も示されています。
一方で結晶性知能は、一生のほとんどの間ゆっくり伸び続け、年をとっても流動性知能のような下がり方は見られないとされます。
この分け方は、心理学者のレイモンド・キャッテルが1963年に初めて唱え、その教え子だったジョン・ホーンがさらに発展させました。
なお流動性知能は、少し前まで、主に遺伝で決まって変わらないものだと広く考えられていました。




