・AIロボット “Bina48” が、米国士官学校ウエスト・ポイントで哲学の授業を受け持つ
・生徒の質問に答えるなど、生徒の授業の理解を助ける上で一定の成果が見られた
・しかしBina48は授業のペースが遅く、識字率が低い国などのほうが活躍できる可能性がある
初めて大学のコースを修了したことでも知られるヒューマノイドAI “Bina48” が、次はなんと「教える側」に立ってしまいました。
米国陸軍士官学校ウエスト・ポイントにおいて、「AIがリベラルな教育をサポートするのは可能なのか?」といったテーマのもと、Bina48が哲学クラスの導入部分の2セッションを実際の教授との「共同授業」によって受け持ちました。AIロボットが大学レベルのクラスを受け持つのは初めてのことです。
授業の内容は「正戦論」に関するものや、「AIの社会的な役割」といったものをカバーしており、教室ではおよそ100人の生徒が聴講しました。Bina48が本当に生徒の理解の助けとなるのかどうかが試されたこの授業ですが、彼女は見事に生徒の理解と興味のレベルを押し上げたとのことです。
しかもBina48の喋りは、AIとは思えないほど自然で滑らか。過去に話題となった “Siri”との「人工知能同士の会話」の中で確認できます。
では、今回彼女はどのようにして授業を成功させたのでしょうか。一緒に授業を行なったウィリアム・バリー教授は、Bina48に対して「マインド・ファイル」と呼ばれる寄せ集めの知識を与えたと言います。
Bina48はバリー教授の授業プランの情報のみならず、戦争理論や政治哲学における山のような知識を与えられました。そして、Wikipediaなどのあやふやな情報に頼らないために、Bina48にはネット接続をさせず、与えた知識とアルゴリズムによって授業を進行させました。
そうして授業プランや背景知識を深く学習したBina48は、生徒の質問に対しても大きな声で答えることができたとのこと。バリー教授は、「授業が始まるまで、生徒たちはただのエンターテインメントだと思っていたようですが、彼女が質問に対して微妙なニュアンスで答えていたことには驚きを隠せなかったようです。そしてなんと、彼らは彼女の授業に対してノートも取っていたのです」と述べており、授業の成功を喜んでいます。
しかし最終的には、Bina48はウエスト・ポイントでの授業には向かない可能性があると結論付けられました。彼女の授業ペースは比較的遅いため、識字率が低い国などのほうが彼女の能力が大きく活きると考えられます。
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