・人間の脳における「注意のパルス」が「1秒間に4回」しか発せられないことが判明
・パルスの間にある「隙間」を脳が結びつけて「1本の連続した映画」のように感じさせることで、そのギャップを意識させないようにしている
・このように注意に流動性を持たせることは、進化の上で有利に働いていると考えられる
私たちは意識しようがしまいが、常に「連続した世界」を体験しています。よって、いつも何かに集中しているようにも思えますが、その考えが間違いであることが新たな研究により示されました。そこでは、私たちの注意のパルス(拍動)は「1秒間に4回」しか発されないというのです。
A Dynamic Interplay within the Frontoparietal Network Underlies Rhythmic Spatial Attention
https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(18)30636-6
Neural Mechanisms of Sustained Attention Are Rhythmic
人間とサルを対象にしたこの研究では、私たちが視覚で体験する主観的な世界は「幻」であるといったことが語られています。つまり、パルスとパルスの間には注意を向けることができない「隙間」が存在しており、私たちが常に連続した世界を意識できるはずがないということです。
例えば、舞台で4分の1秒、つまり250ミリ秒ごとにスポットライトが暗くなって、代わりに全体を照らす「客席照明」が明るくなるとします。つまり、その瞬間にのみあなたの脳は、舞台上のものだけでなく、周囲全体をとらえることができるのです。
しかし私たちは、実際には途切れ途切れの世界を体験しているわけではありません。決して「1秒間に4回だけ世界全体を意識できる」といった感覚は持っていないのです。それでは、なぜ私たちは連続的な感覚を体験しているのでしょうか?
この点につき研究者は、「人間の知覚にはバイアスがかかっている」といった結論を導き出しました。つまり、実際には意識の中にそのような「隙間」が存在しているにも関わらず、脳はそれを経験させないために知覚を結びつけて整合性をとり、「1本の連続した映画」のように見せているということです。
また、人間が1秒間に4回しか意識に注意を向けられないとすれば、私たちが注意を切り替える機会もまた、1秒間に4回しか無いといったことになります。そこで必ずしも注意の対象を切り替える必要はありませんが、そのタイミングにおいてのみ優先順位の再評価を行うことができるということになります。
およそ1世紀前の1924年に脳波計が発明されて以来、こうした「脳のリズム」の存在自体は広く知られていましたが、研究者らはそれが何を意味しているのかについて明確には理解していなかったといいます。そして今回の研究が、脳のリズムと私たちの体験している世界を結びつける初めての研究であるとのことです。
また、この「パルスによる注意」には進化の上で有利に働いていることが考えられます。つまり、意識が1つのものに集中しすぎてしまえば、その隙に天敵から捕らえられてしまいかねないのです。
つまり、私たちは1秒間に4回「しか」集中できないのではなく、あえて集中に流動性を持たせているということです。そして、あなたが今この文字を呼んでいる瞬間も集中が連続しているわけではなく、そのギャップを脳が無意識に埋めてくれているのです。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/23837
via: princeton_university / translated & text by なかしー