■男女不平等を公平に測定するための新しい指数”BIGI”により、多くの国々で男性が女性より不利な立場にあることが判明
■BIGIは、経済発展の程度に関係なくすべての国に共通して適用でき、刑罰、兵役、仕事による死といった男性に不利な争点も公平に含む
■男女平等の推進には、発展途上国では「教育」、先進国や発展が中程度まで進んだ国々では「予防医療」が鍵になる
「女性の社会進出」「女性が輝く社会」と、男女平等に関する話題では、あくまでも女性の立場が男性よりも不利であることを前提として、いかに女性の立場を向上させるかに意識が向きがちです。
ですが、女性は本当に男性よりも不利な立場にあるのでしょうか?もしその前提自体に、「女性は男性より不利だ」という先入観が混じっていたとしたら、男女平等の取り組みを効果的に行うことは困難になるでしょう。
ミズーリ大学とエセックス大学の研究チームが、男女不平等を公平に測定するための新しい手法を発表しました。従来の方法と違い、人々の幸福度をより正確かつ容易に測ることが可能です。
“Basic Index of Gender Inequality (BIGI)”(男女不平等基本指数)と名付けられたこの新手法は、「教育の機会」、「健康的な生活に対する期待」、「生活に対する総合的満足度」という3つの因子に焦点を当てるものです。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0205349
研究チームは、134ヶ国に住む68万人の人々のBIGIスコアを測りました。すると驚くべきことに、女性が男性より不利な立場にある国が43ヶ国であるのに対し、男性が女性より不利な立場にある国は91ヶ国にも上ることが明らかに。
研究チームは、従来の指数における「女性が不利な状況に重きが置かれる傾向」を是正すると同時に、経済発展の程度に関係なく、あらゆる国の人々に共通して適用できるシンプルな指数の開発を試みました。
BIGIスコアの分析から、経済発展がもっとも進んだ先進国では、男女平等の達成度がもっとも高く、女性にとってわずかながら有利な社会であることが明らかになりました。
反対に途上国では、女性は男性より不利な立場に置かれていることが判明。その主な要因は、女性が教育を受ける機会が限られていることでした。経済発展が中程度の国々では、女性が不利な国と男性が不利な国はほぼ同数と、結果はまちまち。
男女平等というと、つい女性にとって不利な状況にばかり焦点が当てられがちですが、男性がいつも有利とは限らないことが伺えます。
男はつらいよ…新しい指標で見えた新事実
研究チームは、2006年の導入以降広く用いられてきた”The Global Gender Gap Index”(世界男女格差指数)では、男性が不利になる争点が測られなかったと考えています。
たとえば、同じ犯罪を犯しても男性には女性よりも重い刑罰が与えられる傾向があります。また、兵役が課され、仕事に起因する死が起きやすいことで、結果的に寿命が短くなるのも男性。まさに「男はつらいよ」です。
これは、近ごろ世界的に注目を集めている「有害な男性らしさ」(男性は強くたくましく、弱音を吐いたり感情をさらけ出すものではないという先入観)に対する批判にも関連する事実です。
また、従来の世界男女格差指数では、性別による違いが、男女の不平等によるものか、個人の嗜好によるものかを区別することが困難でした。
これに対してBIGIは、どの国の人々にも、その経済的・政治的発展レベルに関わらず直接当てはめることができる生活の側面に焦点を当てます。
そして、それらの側面は、女性に不利な争点だけでなく、男性に不利な争点も公平に含むものです。これにより、これまでよりもずっとシンプルに性による不平等を測ることが可能になります。
研究チームはBIGIのデータをもとに、国際的な男女平等の推進には、発展途上国においては「教育」、先進国や発展が中程度まで進んだ国々においては「予防医療」が鍵になるという予測を導き出しました。
もしかすると、男性と女性の生き辛さはつながっているのかもしれません。どちらにせよ、物差しになる指数そのものに偏見や先入観が混じっていては、正確な実態の把握は不可能です。より客観的で汎用性の高い指数BIGIの導入により、世の中の新たな真相が見えてきそうですね。