■PC上でタブを複数開いておこなう「マルチタスク」は、脳の認知機能にダメージを与えている
■「マルチタスク」は脳の思い込みで、実際は「タスク・スイッチング」という注意の切り替えで作業を補っている
■ライフハッカー社の調査によると、集中力を保ち、効率を低下させないタブの数は9つ出ることが判明
情報社会の現代において、万人に必須の道具となりつつあるパソコン。そして、PC上にタブをいくつも開いて作業を同時におこなう「マルチタスク」は、現代ワークスタイルの主流となっていますね。
一見、便利に見えるこの「マルチタスク」。実は、精神を疲労させることで脳に悪影響を与える原因となっています。ミシガン大学の研究によると、「マルチタスク」をおこなう人の脳は、「シングルタスク」派の人より認知機能の減退が早いことが判明しているのです。研究の詳細は「PNAS」上に掲載されています。
https://www.pnas.org/content/115/40/9889
タブをたくさん開いておいて同時に仕事をこなす様は、とても優秀な印象を周りに与えますし、また「マルチタスク」が脳トレにもなっていると考える人も多いのが現状。しかし、それはまやかしに過ぎず、人間の脳は複数のタスクを同時におこなうようにはできていません。
実際、「マルチタスク」ができていると思い込んでいるのは、脳の「タスク・スイッチング」機能によるもの。「タスク・スイッチング」とは、いくつもの作業をおこなう際に、脳が注意を向けるタスクをすばやく切り替えることで、これにより私たちは作業能率を補っています。
たとえ、勉強しながら音楽を聞いていると思っていても、脳はどちらか一方にしか集中していませんし、またスイッチングするたびに、私たちの集中力は削がれていくのです。そして、この「マルチタスク」のデジタル版が、PC上にタブをいくつも開いて作業をおこなう「タスク・スイッチング」。
私たちが「マルチタスク」をおこなう理由は、主に2つあります。1つは「自己充足感が得られる」ということ。タブを同時に複数開いておくことで、常に何かやっているという感情が湧いてくるのです。
そして、もう1つは「情報を取り逃がすこと」への恐れから来ています。これはインターネット・タスクにおける「FOMO」と呼ばれるもので、「Fear of Missing Out」の略称です。膨大な情報が溢れる現代社会において、私たちは少しでも大切な情報を漏れなく抑えようとする気持ちを持つ傾向にあります。
要するに、今は必要なくとも、タブを閉じてしまったとたんに貴重な情報が発信されているかも知れないという不安感を抱いてしまっているのです。
しかしながら、「マルチタスク」は情報過多によって、現在取り組んでいる作業効率を落とすことの根本原因。1つのタブに集中していると思っていても、側に開かれてあるタブを視界からさえぎることは非常に困難です。
それでもやはり、要らないタブを閉じて必要になったらまた開くという作業はとても面倒なものです。そこでアメリカのメディア会社「ライフハッカー」は、私たちが効率的に作業をおこなうことのできるタブの数を調査。すると、人間の脳の機能内で十分にまかなえるタブの数は、最大で9つであることが分かりました。
9つ以内に抑えておくことが、もっともスムーズにタブ間を行き来することができ、集中力の妨げにもならないとのこと。もちろんパソコンはそれ以上の数にも対応することができ流でしょうが、私たちの脳と釣り合った範囲で、タブとうまくお付き合いしていくことが重要でしょう。