私たちがふだん使っている鎮痛剤。中でもイブプロフェンは多くの市販の薬に含まれており、広く使用されています。しかしそんなイブプロフェンに、恐ろしい副作用がある可能性があるようです。
実験室で人間の細胞を使った研究結果によると、妊娠初期の3ヶ月にイブプロフェンを飲むと、娘の卵子の数が減る可能性があり、将来の出生率に影響を及ぼすかもしれません。
女性はある決まった数の卵子を持って生まれてくると一般には思われています。とはいえ、成人の卵巣はそれ以上産み出すことができないとする考えに挑戦する研究もあるのですが。
https://academic.oup.com/humrep/advance-article/doi/10.1093/humrep/dex383/4831088
齧歯類での先行研究では、イブプロフェンを含む痛み止めが卵巣ひいては出生率に影響があることが示されています。一方男性を対象とした最近の研究では、高濃度のイブプロフェン摂取が長引くことと、男性の性ホルモン遮断を結びつけています。とはいえ、多くて30%の女性が妊娠中にイブプロフェンを取っています。
「近年に渡って、出生率が減少してきていることがわかっています。なので、なぜそれが起きているのか、可能性のある原因を見つけることは重要です」とエジンバラ大学の研究者で共著者でもあるロッド・ミッチェルはいいます。「なぜなら、それが比較的最近の現象であり、社会的な要因に加えて、鎮痛剤を含む環境要因が何らかの役割を演じているように思えるからです」
雑誌Human Reproductionでミッチェルとフランスやデンマークの共同研究者は、7から12週間で中絶された185の胎児から得られた卵巣組織を使って、発育中の卵巣にイブプロフフェンが与える影響をどのように調査したのか報告しました。
この研究の最初のステップとして、チームは中絶前数時間にイブプロフェンを摂取した母親から得られた、13の胎児に繋がるへその緒の血液を調べました。それにより、イブプロフェンが胎盤の障壁を実際に越えていることがわかりました。
185の胎児のそれぞれに対して、その組織を様々な環境下で培養しました。培養皿を使って、ひとつはイブプロフェンの無い環境で、その他は様々な濃度のイブプロフェンに浸して育てました。これらは人の体内で循環する濃度を反映しています。
7日後、イブプロフェンにさらしていないサンプルと比べて、臍帯血で検出された程度の濃度で育てられた組織は平均して卵巣細胞が50%少なくなっていました。そして卵に成長する生殖細胞に至っては、50から75%減少していました。これは、細胞死が増えたことと、細胞分裂が減少したことで下がりました。
8から12週間の胎児がイブプロフェンに晒されてから、早くとも2日後にこの害が始まることが更なる研究でわかりました。サンプルのサブセットで5日間の回復期間を設けた後で検査したところ、イブプロフェンの影響からの回復は部分的にしか観察できませんでした。しかし、生殖細胞だけは回復を示しました。
しかしミッチェルは、体内の環境が培養皿での環境とは異なることを理由に警告しています。出生に影響するまでにどれくらいの生殖細胞があれば耐えられるのか、また、卵巣が長期的には完全に復帰できるかどうかは、はっきりしていないからです。
「私たちが培養皿で観察したような影響を生殖細胞で認めるとすれば、それが現実において影響を及ぼし、出生にも影響がある可能性を示すことになります。しかし、私たちの研究ではそこまでは明らかにしていません」
妊婦に対して彼はこう付け加えます。「アドバイスは変わりません。必要な時だけ鎮痛剤を飲むべきです。そして、最も少ない用量で服用期間も短くしてください」今現在妊娠している女性に対しては、イブプロフェンの代わりにアセトアミノフェンを選択し、30週間を超えたらイブプロフェンを飲むのをやめるようにアドバイスしています」
とはいえ、この研究に対し懐疑的な声もあります。
培養皿で起こったことを元にして、『よろしい、これは妊娠した女性でまさに起こっているかもしれない』と言うことは大きな飛躍です。卵巣中の生殖細胞の数は、妊娠中期に約300万個で最大となり、それから自然に減っていきます。女性が1ヶ月に産み出す卵はせいぜい1つです。なので、これらの卵の多くが失われたとしても対処できるのです。
薬はすべて、副作用のリスクと隣合わせ。「これなら大丈夫」というものは存在しませんが、自衛のための知識は持っておいたほうがよさそうです。
via: The Guardian/ translated & text by Nazology staff
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