■近代に起きた地球の「小氷期」は、伝染病や大量虐殺によるアメリカ先住民の大量死が一因となっていた
■アメリカ先住民の90%以上が減ったことで、開拓されていた農地に森林が再び繁茂しはじめ、炭素吸収量が急激に増加した
■先住民の消失で復活した森林面積は、およそ56万㎢で、フランスの面積を上回る広さである
「アメリカ先住民の大量死が地球の温度を下げた」という、一見つながりが分からない、バタフライ・エフェクトのような新説が発表されました。
16世紀〜19世紀にかけて地球上に起きた「小氷期(Little Ice Age)」と呼ばれる気温の低下現象。これは、太陽活動の低下や火山噴火の活発化(火山灰により日射量が遮断された)が主な原因とされています。
しかし、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのアレクサンダー・コッホ氏とその研究チームが、それらの要因に加えて「ヨーロッパ人の入植に伴うアメリカ先住民の大量死が気候変動の一因となっている」ことを発表したのです。研究の詳細は、2018年に「Quaternary Science Reviews」上に掲載されています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0277379118307261
人口の「90%以上」がこの世を去った
ヨーロッパによるアメリカ入植は、コロンブスが大陸到着に成功した1492年に端を発します。それから数世紀にわたって、スペインやポルトガルが中央アメリカや南部アメリカ、さらにはメキシコにまで支配の手を広げていきました。その過程で、先住民たちはヨーロッパ人に大量虐殺されると同時に、彼らが経験したことのない伝染病に侵されました。天然痘やはしか、チフス、インフルエンザなどがそれにあたります。
研究チームによると、この大量死によっておよそ6,050万人いたとされる先住民の「90%以上」が死に至り、人口が500〜600万人にまで激減したとのことです。しかし、人口が激減したからと言って、それが原因で地球の気温が下がるなどと言うことは本当にありえるのでしょうか?呼吸によるCO2排出量が減ったとしても、それは微々たるものでしかありません。ところがコッホ氏によれば、「地球の気温低下は十分にありうる」とのことです。