アメリカは再び「未開の地」へ
その根拠には、人間の「呼吸」以外の要因が関わっていました。というのも、土着の先住民が大量に減ったことで開拓されていた農地が再び野生化し、森林が復活するという事態が起きていたのです。
これにより、およそ5,600万ヘクタールもの農地が、手付かずの状態に戻りました。1ヘクタールは10,000平方メートルですから、その広さはおよそ56万平方キロメートルとなり、フランスの国土面積(55万1,500平方キロメートル)を上回る広さとなります。つまり、アメリカ先住民の人口が激減することに伴い、途方もない規模で植物相や森林が急激に繁茂し始めたのです。
コッホ氏は「アメリカが再び未開の地と化したことで、推定で74億トンもの炭素量が繁茂した森林により吸収された」と指摘します。これは地球の気候に影響を与えるのに十分な量であり、温室効果ガスは7〜10ppm(0.0007~0.001%)減少、温度に換算すると、地球全体で0.15°C 低下するほどの影響力があったのです。
アメリカ先住民の大幅な人口減少は、「小氷期」における大きな気温低下において小さな要因かもしれませんが、彼らが大量死したという凄惨な状況に地球の身も凍りついたことは事実でしょう。