■フンコロガシが、光害の影響で月光が弱い時でも、その偏光シグナルを捉えて方向を認識する
■満月の間は光害があっても正確に方向を認識できるが、半月や三日月の間はそれが少し困難に
■満月の夜の千分の1の強さの偏光シグナルしか出ていない時でさえ、その微弱なサインを捉えられる
他の動物の糞を丸めて安全な場所まで持ち運び、食料とするフンコロガシ。夜行性動物の中で唯一、月からの反射光の偏光をもとに方向を認識を把握することで知られています。
スウェーデンのルンド大学の研究チームがこのほど、街の灯りなどによる光害の影響で月光が弱い時でも、フンコロガシが偏光シグナルを捉えて方向を認識することを示しました。月や太陽などからの光は、地球に到達するまでの間に上層大気中を漂う分子とぶつかって進路を曲げ、「偏光」します。論文は、雑誌「Journal of Experimental Biology」に掲載されました。
http://jeb.biologists.org/content/222/2/jeb188532
ルンド大学で生物学を研究するジェイムズ・フォスター氏によると、フンコロガシは満月の間は、都会の灯りの中でも正確な方向感覚を持つことができるのに対し、半月や三日月の間はちょっぴり「方向オンチ」になってしまうとのこと。
月の偏光シグナルの強さは、月の公転によって月面上の輝いて見る部分が変化する「月相」つまり「月の満ち欠け」によって変化します。たとえば、半月の偏光は満月の3分の1、三日月の偏光は満月の5分の1の強さにまで減少します。研究チームは、フンコロガシがこうした弱々しい偏光シグナルをなんとかキャッチして、砂漠の上の目的地へ向かってまっすぐに糞を転がせる仕組みを調べました。
その結果、フンコロガシが偏光に対して極めて敏感であることが判明。昼行性昆虫がかろうじて認識できるほどの、満月の夜の千分の1の強さの偏光シグナルしか出ていない時でさえ、その微弱なサインを捉えることができることが分かったのです。
日中に活動するミツバチは、太陽の反射光の偏光をもとに太陽の位置を割り出し、方向を測定することが知られていますが、フンコロガシはまさに同じことを夜間に行っていることになります。
夜間の偏光シグナルの強さに影響を与える因子は、月の満ち欠けだけではありません。街灯などの人工光による「光害」が月の偏光シグナルを弱めることも、フンコロガシの悩みの種の一つ。それでも満月の夜は、わずかな偏光シグナルを頼りに方向を定め、彼らはせっせと糞を転がすのです。
さらにフンコロガシは、夜空の色や明るさのパターンも利用しているそう。研究チームは過去に、フンコロガシが糞を転がす直線方向を、天の川の明かりを道しるべにして決めていることを突き止めました。
ですが月夜に限っては、偏光こそがフンコロガシにとって一番頼れる「方位磁石」のようです。彼らの行く手が、月明かりに煌々と照らされますように…。