Q4.もしエボラが日本に来たらどうなるんですか?
―検疫法などの予防措置はありますが、もしエボラが日本に入るようなことがあったら何が起こるでしょうか?
自動的に「・・・が起こります」という答えはありません。
検疫は自己申告とカメラによる体温のチェックだけですので、感染から発症までの数日間の間だったら、すり抜けてしまいます。また、エボラの症状には特徴的なものがありませんので、熱が出ていても、その場で(空港で)エボラだと診断することは不可能です。ただし、私達が開発した迅速診断キットを使えば、採血さえその場で出来れば、15分程度で診断できますので、陽性だった場合には、すぐに隔離する事が可能になります。
―15分で診断できるんですね!しかしもしすり抜けたらどうなってしまうのでしょうか…
実は今回、補足としてめちゃくちゃ詳しい「エボラ日本上陸:4つのシナリオ」をご用意いただきました。先生、ありがとうございました!どのケースもリアルすぎて怖い…。
シナリオ例1
アフリカで感染して、入国後に日本国内で発症した場合、普通は近所の病院に行くと思います。そこの医師が、アフリカから帰国して発熱という状況で、すぐに血液検査を行いエボラ出血熱を疑った場合、血液が国立感染症研究所(感染研)に運ばれ、そこで確定診断(遺伝子を検出してウイルスの有無を調べる)をします。陽性であった場合には、その人が入国してから接触した人、全てを調べ、その接触した人が接触した人も調べ、全員を追跡することになります。
追跡できた人に対して、状況を説明し、体調が悪くなったらすぐに病院に行き、確定診断のための検査を依頼する流れになろうかと思います。同時に、これはメディアで大きく取り上げられると思うので、全国の医師が原因不明の熱性疾患で来院した患者に対して注意を払うという状況になると思います。数週間の間に、2例目3例目が出なければ、多分大丈夫だと思います。
2例目3例目の感染者が確認された場合には、その人達が接触した人、接触した人に接触した人の追跡が、1例目と同様に始まります。感染者が出ている間はこれがくりかえされます。最後の患者が確認されてから数週間、新しい患者が出なければ、終息ということになります。
普通は、アフリカから帰国後に発熱、というだけで、すぐにエボラ出血熱を疑う医師は多くはないと思いますので、薬を処方して家で安静に、という事になろうかと思います。家で症状が悪化し、出血症状を示すと、血液を含む吐瀉物、唾液や便を介して家族内に感染が広がる可能性があります。その後、家族も発症して病院に行く事になり、何らかの感染症が疑われ、その時点で、血液が感染研に送られて、ウイルスの有無が確かめられます。陽性だった場合には、上と同じで、接触者の追跡が始まります。
診断を経て判明する以上、どの感染症でも上陸してから感染が判明するまでに時間差が生まれます。それはエボラでも同じようです。
アフリカで感染し、帰国後発熱したが、無理して出勤し、ラッシュアワーの電車の中などで嘔吐して、それに不特定多数の多くの人が触れた場合などは、かなり厳しい状況になると思います。その人が病院に行き、血液サンプルが感染研に送られ、エボラ陽性となった場合のその後は、上と同じです。血液サンプルが感染研に送られずに、原因不明の熱性疾患として処理されてしまった場合には、2例目3例目が発症してからようやくエボラ発生ということが分かると思うので、電車の中の人も含めて、接触者の追跡は相当な数にのぼります。ただ、インフルエンザウイルスのように伝播力が強くないので、感染可能性は基本的に直接接触した人に限られます。日本であれば、どうにか追跡は可能だと思います。
このシナリオが一番ヤバそうですね。近年無理をして病気のまま出勤するなんて話はよく聞くので現実味もある所が特に怖いです。病気のまま無理をして出勤、ダメ、ゼッタイ。
アフリカで感染し、帰国後発症し、そのまま誰にも感染しなければ(激しい出血症状を伴わない場合など、ウイルス拡散の確率は減りますので)、原因不明の熱性疾患として処理されると思います。その場合、死亡するにしても治癒するにしても、人知れず、日本にエボラウイルスが持ち込まれていた、という事になります。エボラではありませんが、同じ種類のウイルス(マールブルグウイルス)で、アメリカでそのような例があります。このときには、感染していたことは、病気になっているときには分からずに、治ってから、後から調べたら分かった、というものです。
「実は過去、ここにエボラウイルスの痕跡が!」という話が後から発覚するの、本当に怖い話とかにありがちな流れだしエボラだと本当に洒落にならないので怖いです…。
以上、ネット上では世界一詳しい(たぶん)「エボラで起こる日本のバイオハザードストーリー」でした!今のところ、日本でふつうに生活していればエボラにかかることはほぼ無さそうですが、これを知っていれば理解や予防の助けになるかもしれませんね。備えあれば憂いなしです。