■12歳の少年が核融合炉の製作に成功
■核融合炉は、強い力を加えることで原子同士を融合させ、原子内部のエネルギーを放出する仕組み
■強力な電圧は、大量のエネルギーを消費するプロセスによって発生するため、電源としての実用化は未達成
2008年、14歳の天才少年が自宅のガレージに核融合炉を作ったとして話題になりましたが、その記録がまた打ち破られました。
自宅の空き部屋で核融合炉の製作に成功したのは、なんと若干12歳の少年。実際に機能する核融合炉を作った人物としては、史上最年少です。
少年の名はジャクソン・オズワルトくん。米国のメンフィス在住です。
ジャクソンくんはなんと、「世界版ヤフオク」ともいえるネットオークションサービス「eBay」で、両親が買ってくれた真空室やポンプをカスタマイズして核融合炉を作ったとのこと。
総製作費は10,000ドル(約110万円に相当)。おもちゃの値段としては高価ですが、核融合炉がこの値段で作れてしまうことも驚きです。
さらに彼は、独自に核融合炉の作り方に関する情報をインターネット上で探し、専門家の助け無しに作り上げてしまいました。
そして2018年1月19日、自身の13歳の誕生日の数時間前に、無事核融合に成功しました。なんともスゴイ誕生日プレゼントです。
「はじめは、他の人がどうやって核融合炉を作ったのかを学ぶことから始めたんだ」と、ジャクソンくんは語ります。
その後、必要な部品をリストアップし、そのほとんどをeBayで集めたジャクソンくんでしたが、いざ手元に届いてみると期待していたものと異なることもしばしば。そこは創意工夫を凝らして、プロジェクトに必要なかたちに修正を加えたんだそうです。
核融合炉の真空室内では、炉心プラズマの中で5万ボルトの電圧で重水素ガスが温められます。ちょうど、太陽が温められるのと似た仕組みです。
この強力な電圧は、生み出すよりも大量のエネルギーを消費するため、電気の供給源としての実用化はいまだ達成されていません。「だから僕は億万長者じゃないんだ」と、ジャクソンくんは肩をすくめます。
しかし「インターネットで勉強した」といっても、簡単にググって見つかるサイトに作り方が載っているわけはありません。
ジャクソンくんが情報収集に利用したのは、アマチュア物理学者向けのオンラインフォーラム”Fusor Research Consortium”。このプラットフォームの中で、色々な人からアドバイスを受けたり、核融合炉の製作方法を学んだりしたそうです。
その様子を近くで見ていた両親は、「プロジェクトの内容はほとんど理解できなかったものの、資金を提供することに決めた」と話しています。
両親があまり知識がないということは、ジャクソンくんはまさに「一人で」学習し、核融合炉を製作してしまっということになります。末恐ろしい子です。
ただし、作るものが作るものです。さすがに安全面には配慮しなければなりません。
父親のクリスさんは、放射能や高圧電流を取り扱う上での危険について助言を息子に与えてくれるよう、専門家に依頼し、安全性の確保に努めたそうです。
これまでに核融合炉の製作に成功した最年少の人物は14歳の天才少年、テイラー・ウィルソンくんでした。ジャクソンくんは、このウィルソンくんのビデオに触発されて「自分もやってみよう」と思い立ったと話しています。
ジャクソンくんは将来、原子力エンジニアになって、こうしたプロジェクトに数多く関わりたいと考えています。彼のような若き期待の星の知恵を結集すれば、エネルギーの消費量よりも生産量が上回る核融合炉の開発も夢ではなさそうです。
この調子でいくと、10年後には3歳児が核融合炉を作っているかもしれませんね。