一卵性双生児の妊娠が発覚したが…
妊娠6週間の母親の胎内を超音波検査で調べたところ、胎盤が1つだったことと、2つの羊膜腔の位置が判明。その結果から、一卵性双生児を宿していると診断されました。しかし、14週目に見た超音波検査では、双子の一方が男の子、もう一方は女の子であり、純粋な一卵性ではないことが分かったのです。
通常、双子には2つのパターンが知られています。遺伝子の異なる二卵性双生児は、2組の別々の卵子と精子が同時期に受精することで生まれます。一方、全く同じ遺伝子を持つ一卵性双生児は、一組の卵子と精子が受精した後に分裂し、細胞運命が決まる前に2つに分かれて別々の個体になることで生まれます。
2007年までは、準一卵性双生児は仮説上の存在に過ぎませんでした。しかし、双子をランダムに調べた結果、遺伝的なキメラとなる準一卵性双生児の存在を確認。双子はいずれも、異なる遺伝子セットを持った細胞が混ざり合ったモザイクだったのです。
そのひとつはX染色体を2つ持つ細胞で、もう一つはY染色体を1つ持つ細胞です。もし赤ちゃんが外陰部で性別を判断できない「半陰陽」でなかったなら、真実は見過ごされていたでしょう。
1つの卵子に2つの精子?双子はどのように誕生したのか
今回のケースでは、赤ちゃんはどちらも半陰陽を示していませんが、XXとXYの2種類の細胞をふたりとも併せ持っています。羊水から分離された細胞のDNAを調べた所、母親由来のDNAは100%一致し、父親由来のものは78%しか一致しませんでした。こういった細胞の寄せ集めになるような受精の仕方には2種類考えられます。
ひとつは、受精前の卵子が事前に未完成な状態で複製されており、2つの精子が同時に受精したときには完全に分裂してはいなかったというものです。
もう一つの可能性は、ひとつの卵子に2つの精子が同時に受精して、その後に3セットに分かれた染色体が3つの細胞に分裂し、混じり合った細胞が振り分けられて双子が生まれるというものです。
専門家の間では後者の説明が好まれていますが、どちらが正しいか、はたまた全く別の仕組みが存在するのかは、症例が少ないこともありはっきりしません。
同じ様なケースが、二卵性双生児の中で見過ごされている可能性があるため、968組の双子について調べたのですが、見つけることは出来ませんでした。また、世界的な双子研究の中にも他に準一卵性双生児は見つかっていません。そのため、準一卵性双生児は非常に稀であるといえるでしょう。
しかし、遺伝子スクリーニングや、医療データベースの拡充によって、将来的にはさらなる準一卵性双生児が見つかることもありえます。その暁には、受精プロセスが詳しくわかるかもしれません。