恐怖に対する脳の反応
それでは、「恐怖」に直面したとき、人の脳はどのように反応するのでしょうか。
まずもって、私たちの脳は、個々に別れた2つのルートの組み合わせで働きます。1つは、「感覚的ルート」で、扁桃体という感覚系の脳領域で起こるものです。その領域内に、目や耳で知覚したものに反応して「恐怖」感覚のシグナルが出されます。すると、心拍数の上昇や発汗作用の活発化が促されるのです。
それとほぼ同時に、2つ目の「合理的ルート」である大脳皮質の上部で、知覚したものが「危険であるか否か」の判断を行います。つまり、「このヘビは毒性がないから安全だ」などというように、合理的に解釈をするのです。
「恐怖」の感情は、この2ルートの作用で生じ、アメリカにあるパデュー大学のグレン・スパークス教授の研究では、恐怖を求める人の方が、「合理的ルート」の働きが活発であることが判明しています。
恐怖を求める人の脳内では、報酬系をコントロールする「ドーパミン」が多く発生します。いわゆる「アドレナリン」が人よりも多く分泌されるので、さらにホラー映画や絶叫マシーンを好むようになるのです。
そして、スパークス教授は「スリル体験が積み重ねられる程、人は恐怖感情に慣れていき、合理的な解釈をほどこすようになる」と指摘します。そこでまた、スリルを求める行為は過激化していくのです。
このように「恐怖」には、慣れることも可能ですが、「恐がる」ことは、人間の生存にとって必要不可欠であります。天敵や自然災害など、命を脅かす危険性のあるものを識別する「適応行動」として、重要な能力なのです。