6.彼女は声だけのAI『her/世界でひとつの彼女』(2013)
近未来のロサンゼルス、妻と別れたばかりのセオドアは、最新の人工知能型OSを入手します。彼の相手をしてくれる「サマンサ」と言うそのAIは、生身の女性よりもお茶目で魅力的。話をする内、声だけのサマンサと恋に落ちていきます。
ついに、恋した相手が「AI」になりました。しかも、姿形のない声だけです。しかし、現実的には、この恋愛が1番ありえそうですよね。近い将来、AIの恋人を胸ポケットに入れて、会話するなんて光景が日常化するかもしれません。
…という妄想も楽しみつつ、本作は主人公セオドアの変化が物語の主眼となっています。サマンサは声だけのAIですが、その性格や会話内容は、セオドアの好みを予測してつくられます。つまり、セオドアの良き理解者となるのは必然で、彼は自分と対話しているとも言えますね。
とすると、最初に紹介した『ラースと、その彼女』に似たお話にも見えます。セオドアとサマンサの言い分がズレていくにつれて、彼の中の何かも変化しているのです。これは、AIを通して、現実の愛に気づくという奥深いテーマを持った作品ですね。