作家や芸術家に特有の「創造脳」がある!?
ハーシュフィールド氏と研究チームは「遠隔思考」の高さが「創造力」の高さと結びついていることを確かめるために、ある実験を行いました。被験者として、創造力が高いと思われる職業ー作家・映画監督・俳優・美術家ーグループ(100名)と事実を重視する職業ー医者・弁護士・金融関係ーグループ(97名)を募りました。
要するに、もとから「創造力」が高いと思われるグループと現在や事実を重視するという意味での「イマココ思考」に長けたグループです。
両グループには「遠隔思考力」をテストするために「500年後の未来世界」や「海底にいる気分」などを自由に想像もらって、そのイメージを紙に書き出すよう指示しました。それから「ペンの利用法」や「メガホンの改善点」について思いつく限りのアイデアを5分間で書き出してもらいました。
その後、被験者には自身の創造力を評価する主観的な評価、さらにはアイデアの数や使用された語彙レベルを実験者が分析する客観的な評価を実施しました。
すると結果はやはり作家や映画監督の方が、主観的および客観的評価ともに優れており、「遠隔思考」の高さが創造的マインドと密接に結びついていることが判明したのです。以下がその図。青色が作家や映画監督、オレンジ色が医者や弁護士です。
さらに研究チームは、fMRIにて両グループの脳波の活動状態を測定しました。被験者に「イマココ思考」および「遠隔思考」をするよう指示したところ、前者においては両グループともに「内側前頭前野(medial prefrontal cortex)」という同じ場所が活動的になっていました。
しかし「遠隔思考」においては、「創造性」の高いグループの人たちだけ「背内側前頭前野(dorsomedial prefrontal cortex)」と呼ばれる部分が活発化していたのです。この働きは医者や弁護士のグループには見られず、イマジネーション力の強い人に特有の「創造脳」と言えるでしょう。
要するに、遠隔思考は自分自身の殻から抜け出す力を与えてくれ、斬新なアイデアを生み出すきっかけとなるのです。創造力を高めるには、イマココに縛られない考え方を心がける必要があるみたいですね。