Point
■AIの概念は2700年前のギリシャ神話の中ですでに誕生していた
■ヘシオドスの描いた「タロース」や「パンドーラー」は神によって作られたアンドロイドである
■神話内のAIはほぼすべて人類に災厄をもたらす存在として描かれており、現代への警告となっているかもしれない
現代はAI(人工知能)がますます活躍の場を拡げる世界になっている。まさに今世紀はAI時代と言えるだろう。
AIの原初的な姿であるオートマトン(自動人形)のアイデアが初めて誕生したのは中世時代だと考えられている。しかしスタンフォード大学のエイドリアン・メイヤー氏によると、AIの概念は今から約2700年前のギリシャですでに誕生していたという。
人類はアンドロイドの夢を見る運命にあるのだろうか。
古代ギリシャが夢見たAI
時は紀元前650〜750年。ホメロスやヘシオドスの時代にまで遡る。
例えばヘシオドスが描いた「タロース」は、発明・鍛治の神であるへーパイストスによって作り出された青銅製のオートマタだ。
頭部から胴体を通って踵まで伸びる1本の血管があり、内部には「イーコール」と呼ばれる神の血が流れている。踵に刺さった釘が血液をせき止めているのだが、メーデイアと言う王女にタロースは眠らされている間、釘を抜かれて失血死してしまう。
タロースはゼウスによってクレタ島の番人に命じられ、日に3周も島をめぐり、近づいてきた船には巨石を投げて撃退していた。
それから『神統記』に登場した「パンドーラー」も忘れがたい。
パンドーラーは、天界から火を盗んで人間に与えたプロメテウスに怒ったゼウスが人類に災いをもたらすために作らせた女性型ロボットである。
彼女は地上に降りる際、箱を渡され「絶対に開けてはならない」と言われる。しかし彼女は我慢できずに箱を開けてしまい、様々な災いが中から飛び出て人間に災厄をもたらす。