正体は「進化を迷走したカニ」か
しかし調査を進めるにつれて、彼はその生物のさらなる奇妙さを知ることとなる。カニの1/4程度の大きさのCallichimaera perplexaは、9000~9500万年前の白亜紀に生息していたものであったことが分かったのだ。
さらに発見から数年後、今度は米国ワイオミング州とモロッコで似たような化石が見つかったとの一報が届いた。これほど離れた場所で化石が発見されたという事実から、彼らが非常に適応能力の高い種であることが考えられ、これは、カニの系統樹にまったく新しい枝を形成する驚くべき発見であるとのことだ。
この発見が本質的に意味するところは、現代でみられるような「カニ」がかつて進化を迷走し、何度も体のプランを変えてきた結果、Callichimaera perplexaという白亜紀の「キメラ」が出来上がったということだ。
Luque氏は、自らが発見したこの奇怪な生物について、「私はこれを『美しき悪夢』と呼んでいるんです。実際に美しい発見であると同時に、フラストレーションが溜まるものでもありますからね」と語っている。