
Point
■ホタテは貝殻のフチに最大200もの小さな「目」を持っている
■それらの目には光に反応して拡大・収縮する瞳孔があり、これまで考えられいたよりも動的な存在であることが明らかとなった
■ホタテの目は光受容細胞の中にみられるタンパク質であるオプシンを、人間の3倍もの量含んでいることが分かった
人間の100倍だと…?
「ホタテ」といえば、その淡白な味に魅了される者も多い。しかし、そんなホタテが貝殻のフチに最大200もの「目」を持っていることを知っている人は少ないだろう。
その複雑な構造についてはこれまで謎に包まれてきたが、「Current Biology」に掲載された新たな研究により、その目には光に反応して拡大・収縮する瞳孔があり、これまで考えられていたよりも動的な存在であることが明らかとなった。
The mirror-based eyes of scallops demonstrate a light-evoked pupillary response
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)30381-1
高性能な天体望遠鏡
ホタテの目の仕組みは、人間のものとは大きく異なる。ホタテの目に入ってきた光は瞳孔と2つの網膜を通過し、目の裏側にあるグアニンの結晶でできた鏡に届くと、そのカーブした鏡によって網膜の内表面へと反射する。
そこでは神経のシグナルが生成されており、シグナルは内臓の神経節(神経細胞の塊)へと送られる。その神経節の主な仕事は、ホタテの内臓と貝柱の動きをコントロールすることであり、こうしたホタテの目の構造は高性能な天体望遠鏡と似ている。

長きにわたって、ホタテの目の仕組みは研究者らを悩ませ続けてきた。研究をおこなったサウスカロライナ大学のダン・スペイサー氏は、「メインの網膜は鏡に近すぎるため、散漫な光しか捉えることができないはずです」と語っている。
つまりホタテの網膜での映像は、ぼやけてピントが合っていないということだ。
しかし新たな研究が、この謎にヒントを与えてくれるものとなった。研究者らは、人間ほど素速くないにせよ、ホタテの瞳孔に拡大・収縮する機能があることを発見したのだ。
その直径は最大で50%も変化するが、拡大・収縮には数分間の時間がかかることもある。ホタテの目には人間の目にみられる虹彩が存在しておらず、その代わりに角膜内の細胞が形を変えている。これにより角膜の曲率を変化させ、鏡に近い網膜上に、鮮明な映像を映し出していることが考えられるのだ。