50~60の進化を経てきた
ホタテの目に潜むミステリーはこれだけではない。そこには人間の3倍もの量のオプシンが含まれていることが分かったのだ。オプシンは網膜の光受容細胞の中にみられるタンパク質であり、光を電気化学信号へと変換する調整をおこなってくれるものだ。
ホタテにみられる12のオプシンが、すべての目の中で働いているのか、あるいは視覚のスペクトラムによって専門分野があるのかどうかまでは分かっていない。また、2つの網膜のどちらかだけに働くオプシンがあることも考えられる。

「目」はおそらく、すべての動物を通して50~60の進化を続けてきた。そしてその多くのケースにおいて、視覚の基盤となる分子である光の信号を電気信号へと変換するタンパク質は大きな変化をみせてきた。
しかし、目の構造や光受容体は生物によって異なれど、根幹となる目の発達をコントロールする遺伝子は驚くほどに似通っていることが分かっている。たとえば、ほ乳類の目の発達において重要な役割を果たす「Pax6」と呼ばれる遺伝子は、ホタテの目の中でも同様の働きをしている。
ホタテの中にこんなミステリーがあることを知らなかった人も多いだろうが、次にホタテを食べるときには目が合わないように注意しておこう。ホタテを覗くとき、ホタテもまたみんなを覗いているのだ。