Point
■北斗七星を含むおおぐま座の星「J1124+4535」が、天の川銀河の外からやってきた可能性が浮上
■J1124+4535の元素比は、天の川銀河に存在する他の星と異なり、近くの矮小銀河の星と共通点が多い
■天の川銀河は、周囲の小さな銀河を次々に吸収しながら形成されてきており、この先も衝突が起きる可能性がある
春の北の夜空に浮かぶ、ひしゃくの形をした北斗七星。
その北斗七星を含むおおぐま座にある星の1つ「J1124+4535」が、天の川銀河の外からやってきた「よそ者」である可能性が明らかになった。どうやら数百億年前に、天の川銀河と衝突した別の銀河のものらしいのだ。
この説を発表したのは、中国と日本の共同チーム。論文は雑誌「Nature Astronomy」に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41550-019-0764-5
化学的性質が異なるのは出身地が違うから
J1124+4535は、2015年、中国の天体望遠鏡LAMOSTによって発見された。2017年に、より解像度の高い映像を日本のすばる天体望遠鏡が撮影した。
その後のスペクトル解析により、J1124+4535にはマグネシウムなどの金属が少なく、ユウロピウムという成分(蛍光体の用途でよく使われる元素)の値が極めて高いことが判明。これは、天の川銀河に存在する他の星には見られないユニークな元素比だ。
研究チームは、J1124+4535の化学的性質と金属組成が、天の川銀河で存在が確認されているどの星とも異なる代わりに、近くの矮小銀河の星と共通点が多いことを突き止めた。このことから、この星が天の川銀河の近くにあった矮小銀河に属していたことを導き出したのだ。
矮小銀河は、天の川銀河に衝突した際、J1124+4535を含む数十億個の星を天の川銀河にもたらしたようだ。それらの多くは、天の川銀河にもともと存在していた星よりもずっと年齢が古い。
星を構成する成分は、その星が形成された場所の塵やガスの雲の組成を反映する。通常、近くにある星同士は同じ素材でできているため、似たような化学的性質を持っている。
集団から逸脱した特性を持つ星があった場合、天文学者はその星の出身地を他に求めるのだ。