走査型電子顕微鏡による孔雀グモ体表面の様子
色鮮やかな孔雀グモのお腹の模様を見ると、赤や青の配色の中にひときわ濃い黒い色が見える。研究者はこれをスーパーブラックと呼んでいる。
今回研究者は、走査型電子顕微鏡によってスーパーブラックの体表面の小さな隆起の様子を調べた。
上記画像右の真っ黒なヒメグモCylistella spiderの体表面は滑らかで、これは一般的な黒色だ。
それに対し、画像左Maratus speciosusのきれいに並んだ「こぶ」が見えるだろうか。画像中央のM.karrieに至っては光の散乱と吸収によって、反射を制限するトゲのような鱗を持っている。これがスーパーブラック部分の突起だ。
これらの突起はマイクロレンズアレイの役割を果たしており、光の入射の角度を変えているため、メラニン層における光の反射をわずか0.5%に留めている。これはあの有名な極楽鳥の真っ黒な羽の反射率に匹敵するものだ。
これらの突起がメスの視界から光を屈折させて黒を際立たせ、色鮮やかな模様の視覚効果を高めているという。
研究者たちは、孔雀グモのスーパーブラックはそれ以外の色を際立たせるように進化してきたと考えており、孔雀グモに視覚的バイアスがあると予測している。
メスへのアピールのために派手な視覚的な進化を遂げてきた孔雀グモ。われわれヒトの世界でも、モテるための事情は似たようなものかもしれない。