悲しみも含めて、愛
研究者らは、人間の感情を読み取る際に用いられる「judgement bias test(判断バイアステスト)」を魚に応用させることを試みた。
魚の前には箱が置かれ、箱には黒か白のフタが覆いかぶさっている。黒の下にはおいしいエサが隠されており、白の下は空っぽだ。魚がフタをはがし、エサを見つけたり見つけなかったりすると、魚は色を覚えるようになる。そうして魚が色を見分けられるようになった後に「グレー」のフタを置き、魚の行動を観察する。
実験の1部が動画になっているので確認すると分かりやすいだろう。
この実験で注目するのは、魚がグレーのフタを開けるスピードだ。 研究者らはそこから魚の感情を読み取ろうとしており、楽天的な個体ほど素早くフタを開けることが考えられるとのことだ。
逆に、悲観的な個体はフタを開けるスピードが遅くなる。これはちょうど、同じ量の水であっても「グラスに水が半分“しか”入っていない」「グラスに水が半分“も”入っている」といった受け取り方が心模様によって変化することと似ている。
実験の結果、パートナーを失った多くの魚のフタを開けるスピードが遅かったことが分かり、これにより彼らが「悲しみ」を感じていることが推測された。
つまり、長年連れ添った相方が突然隣からいなくなるあの喪失感を味わっているのは、人間だけではなかったのだ。
研究者らは、次はそうした感情がどのくらいの期間続くのかなどについての研究を進めていく予定だ。悲しみはネガティブな感情であり、誰もが避けて通りたいものだが、その気持ちが愛情を深めているともいえる。
そう捉えれば、「別れの悲しみ」まで含めて「愛」といえるのかもしれない。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/30747