Point
■エウロパの表面に見られる黄色い模様が、塩化ナトリウムであることが判明
■エウロパの環境を再現して海塩に可視光を照射したところ、エウロパのタラ地域と同じように、塩が黄色く変色
■動植物の代謝プロセス全体において重要な役割を担う塩の存在が、生命体が存在する可能性を示唆
木星の第2衛星「エウロパ」。1610年、ガリレオによって発見され、地球から双眼鏡で見ることができるほどの明るさを放っている。
エウロパを覆う分厚い氷の下には、地球と同じように水の海が広がっている。
このことから、地球外生命体の存在の是非を巡って、エウロパはしばしば例に挙げられることも多い。といっても、エウロパの極寒の環境は、私たちが目にしている地球の環境とは似ても似つかないものだ。
しかし、地球とエウロパの類似点は、文字どおり「表面下」に存在するらしい。
米国のカリフォルニア工科大学とジェット推進研究所の惑星科学者のチームが、エウロパの表面に見られる黄色い模様が、塩化ナトリウム、つまり、私たちがいつも調理に用いる塩であることを突き止めた。
論文は、雑誌「Science Advances」に掲載されている。
https://advances.sciencemag.org/content/5/6/eaaw7123
可視光を照射すると塩が黄色く変色 タラ地域と一致
エウロパの氷の下に水の海が存在しているという説は古くから存在したが、もしそれが事実だとしてもその海水の化学組成はほとんど分かっていなかった。
それが今回、エウロパの海水が地球の海水と同じように、塩水である可能性が浮上したのだ。
エウロパの海水が塩化ナトリウムを含むことは以前から推測されていたので、この発見自体はそう驚きを持って受け止められたわけではない。
だが、エウロパの海が地球の海にかなり似ていることを示す強力な証拠が見つかったことの意義は大きい。
塩化ナトリウムは、基本的に赤外線スペクトルにおいて特性を持たず、その特定は難しい。そこで研究チームは、実験室内でエウロパの環境を再現した上で、海塩に可視光を照射することを思いついた。
照射後、海塩にいくつかの変化が起きた。中でも着目されたのは、エウロパのタラ地域と呼ばれる黄色っぽいエリアに見られるのとまったく同じように、塩が黄色く変色したことだ。
塩化ナトリウムの存在を確かめるには可視光線の分析が不可欠だが、従来の装置ではその存在を探知することができなかった。
そこで、研究チームが望遠鏡ハッブルを用いてエウロパの表面を分析したところ、変色した塩化ナトリウムと同じ特徴が見つかった。