■ブラックホールの周囲にある「活動銀河核(AGN)」から放出される放射線に生命を生み出す能力があるかも
■AGNの放射線は物質がブラックホール に落ち込むときに生じる摩擦で発生する
■ハーバード大学の研究によると、AGNの放射線は大気中の分子を分解して生命に必要な化合物を作り出す機能がある
ブラックホールは破壊者でなく創造者なのかもしれない。
あまりの重力の強さに、物質だけでなく光までも吸い込んでしまうブラックホール。ところがハーバード大学の研究によると、ブラックホールから放出される放射線には生命を生み出す能力があるかもしれないというのだ。
この放射線はブラックホールの周りにある「活動銀河核」との連動で生じる仕組みとなっている。これが惑星の大気に照射されることで分子を分解し、生命に必要な化合物を作り出すというのだ。
研究の詳細は、5月24日付けで「The Astrophysical Journal」に掲載されている。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab1b2f
活動銀河核とは
上記のような放射線は正確に言うと、ブラックホール からではなくその周囲にある「活動銀河核(AGN=active galactic nuclei)」から放出される。
AGNの中心部には大質量ブラックホールが存在しており、そこに向かってガスやチリなどが落ち込んでいく。この動きの影響でブラックホールの周囲に平らな降着円盤が形成される。
そして円盤内の摩擦熱によって落下するガスが電離し強烈なプラズマジェットを生み出すのである。これが今回の研究で生命を生み出すと言われている放射線だ。
しかしAGNの放射線は1980年代以来、研究者たちによって惑星の大気を破壊する原因だと考えられている。そのせいでブラックホールの周囲には生命が住むことのできないデッドゾーンが形成されると主張されてきた。
ところが主任研究員のManasvi Lingam氏は「ブラックホールについてはほとんど有害な側面しか語られない」と指摘する。そこでチームは有害だとされている放射がいかなるものか、悪影響が及ぶ範囲はどの程度なのかをコンピューターモデルで調査した。