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Credit: 東京大学宇宙線研究所(2025)
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108億光年先に「超巨大ブラックホールの集団」を発見!

2025.06.05 17:00:08 Thursday

宇宙には、私たちの想像をはるかに超えたスケールの現象が存在します。

その一つが太陽の数億倍もの質量をもつ「超巨大ブラックホール」という宇宙最強の重力源の一つです。

超巨大ブラックホールは通常、数億光年の間隔でしか存在していません。

しかし今回、国立天文台や東京大学を含む国際研究チームの観測により、ある特定の宇宙領域に密集した11個もの超巨大ブラックホールの集団が見つかったのです。

研究の詳細は2025年5月20日付でプレプリントサーバ『arXiv』に公開されています。

【プレスリリース】宇宙最大級の超巨大ブラックホールの集団を発見――宇宙の物質分布に新たな謎を投げかける―― https://research-er.jp/articles/view/145008
Cosmic Himalayas: The Highest Quasar Density Peak Identified in a 10,000 deg2 Sky with Spatial Discrepancies between Galaxies, Quasars, and IGM HI https://doi.org/10.48550/arXiv.2404.15963

超巨大ブラックホールの集団を発見!

今回の発見の舞台は、地球から「くじら座」の方向、およそ108億年前の初期宇宙です。

ここで合計11個の超巨大ブラックホールが一斉に輝いているという、極めて特異な構造が見つかりました。

超巨大ブラックホールは、ガスや星間物質を猛烈な勢いで取り込みながら莫大なエネルギーを放出します。

この活動的な状態はクエーサーとして観測され、遠く離れた宇宙からでもその強い光が捉えられるため、「宇宙の灯台」とも呼ばれています。

とはいえ、クエーサーはあくまで宇宙に点在するものであり、通常は数億光年離れてポツンと存在するのが一般的です。

しかし今回観測された11個のクエーサーは、なんとわずか4000万光年という範囲に密集していたのです。

このような密集は、これまでの観測で一度も報告されたことがなく、もし偶然だとすれば、その確率は10の64乗分の1未満という、もはや天文学的という言葉すら霞むレベルです。

研究者は、この異常な密度を「これまで知られていた宇宙の姿とはまったく違う」と語っています。

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発見された超巨大ブラックホール(クエーサー)の集団/ Credit: 東京大学宇宙線研究所(2025)

さらに日本が誇る大型望遠鏡「すばる望遠鏡」による観測データを分析したところ、これらのクエーサー集団は銀河の中心から約2500万光年も離れた場所に位置していることがわかりました。

普通、ブラックホールは銀河の中心で成長すると考えられているため、銀河が密集する場所にクエーサーが集まっているのが自然です。

そのため、今回のクエーサー集団はブラックホールと銀河の関係についての従来の理解を大きく覆すものであり、「なぜブラックホールが銀河の外れに集中しているのか?」という新たな謎を突きつける結果となりました。

次ページ2種の異なるガス領域の「境界」に位置していた

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