Point
■ブラックホールは通常、星の寿命が尽きる際に起こる大爆発の影響で形成され、それまでに長い期間が必要
■しかし超大質量ブラックホールには宇宙初期の短い期間に形成されたものもあり、上の「恒星爆発説」が不適応
■現在、星の一生を経由しないガス円盤の重力崩壊によって直接的に作られる「直接崩壊説」が有力である
超大質量ブラックホールは実に謎の多い天体だ。
一般的にブラックホールは、寿命を終えた恒星が爆発して形成されるが、それでは超大質量ブラックホールの成り立ちを完全には説明できない。
今年発見された83個の超大質量ブラックホールは、どれもビッグバン後からたった8億年以内に完成していた。つまり星の一生をのんびりと待っている期間はなかったというわけだ。
それでは一体どのようにして宇宙初期の短い期間で、これほどの巨大ブラックホールが出来上がったのだろうか。
研究の詳細は、6月28日付けで「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されている。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab2646
ブラックホールができるまで
超大質量ブラックホールはほとんどすべての銀河の中心に存在すると言われているが、普通のブラックホールとは生い立ちが違う。
基本的なブラックホールの形成段階は「恒星崩壊説」として説明される。太陽の少なくとも5倍以上の質量を持つ恒星が、燃料を使い果たし、寿命を終えるときに大爆発を起こすというものだ。
通常、恒星は自身の重力と放射圧のバランスを取ることで安定している。
つまり恒星自体の重さから生じる「内向きの重力」に対して、内部の核融合によって発生する「外向きの圧力」がその力を打ち消すのだ。しかし恒星が燃料を使い果たすと核融合も生じなくなるため、内向きの重力に負けて自ら潰れてしまう。
こうして起こるのが「極超新星爆発(hypernova explosion)」であり、その後には星の残骸と強力な重力を誇るブラックホールが残される。