Point
■魚類には成魚となってから性転換可能な種が約500種も確認されている
■魚類の性転換は優勢な雄が存在しないなどの、環境ストレスをトリガーに、雌雄を逆転するよう発現遺伝子が切り替えられて起こっている
■魚類の性発達に重要な遺伝子は、その他の脊椎動物でも同様であり、性の決定・維持についての知見は様々な分野への応用が可能と考えられている
人間にとって性別は、一度決定されれば変更のできない絶対的なものだ。
自分の性別に違和感を感じ変換を求める人達も世の中にはいるが、生物学的に性別を変更することは現在の医学では実現できない。
だが、我々よりも進化系統上下等といわれる脊椎動物の「魚類」は、この問題を容易に解決しているのだ。
魚類には成魚となってからも、環境によって性別を変更できる非常に多くの種が確認されている。
ハゼに至っては、一度性転換してから、元の性別に戻ることすらできる。
なぜ彼らは、そんな自在に性別を変更することができるのだろうか? 性転換するとき、彼らの身体にはどのような変化が起こっているのだろうか?
この魚の性転換について、その遺伝的な変化のメカニズムを解明したという研究が発表された。
この研究に関する論文は、ニュージーランドのオタゴ大学の研究チームにより発表され、7月10日付けでSciences Advances誌に掲載されている。
https://advances.sciencemag.org/content/5/7/eaaw7006
熱帯魚の性転換
今回の研究チームが着目したのは、熱帯魚の一周であるブルーヘッドだ。
ブルーヘッドはベラ科の魚で、雌雄の見分けが非常にわかりやすい。雄は大きな体に名前の由来である青い頭をしており、雌は小さく黄色い体をしている。
ブルーヘッドは、ハーレムから雄を取り出すと、残された雌の中で一番体の大きな個体が10日間ほどで新しい雄へと変化する。
見た目の変化がわかりやすく、また性転換を起こす期間が短いために、この手の研究にはうってつけの魚なのだ。
研究チームはこの過程を観察し、性別の転移する期間中のブルーヘッドの生殖腺と脳を検査していった。