ストレスで発現遺伝子を再プログラミング
最初に訪れるのは性格的な変化だ。雄がいなくなると、最大の雌は攻撃的な性格を持つようになる。そして、徐々に雄の特徴である青い頭へと体色の変化を起こしていく。
これは、脳に分泌されたストレスホルモン「コルチゾール」の影響だという。
コルチゾールは雄特有の行動を促進し、さらに性腺にも関与して、女性ホルモンであるエストロゲンの生成を抑制する。
エストロゲンは人間にとっても重要で、女性だと9歳頃から分泌され女性らしい体つきへの成長を助けるホルモンだ。
そして、こうした脳内の変化の他に、ブルーヘッドは遺伝子発現にも変化が現れてくるという。
生物の遺伝子は常に全ての要素が同じ様に発現して細胞を作り上げているわけではない。成長の段階や状況に応じて発現させる遺伝子を化学的な作用によって制御している。これを専門用語ではエピジェネティックという。
性転換を初めたブルーヘッドはこのエピジェネティックの機能を利用して、性別決定のために発現する遺伝子をリプログラミングして、卵巣を精巣へ作り変えてしまうのだ。
これらは連鎖反応で起こっていくという。まず雌の機能に重要な遺伝子を確実にオフにし、その後、雄の遺伝子がオンになるという。
魚類はストレスのような外的要因が、性別維持に関わる遺伝子へ簡単に影響を与えるようだ。