Point
■2015年に発見されていた太陽系外惑星が、主星の重力の影響でアメフトボールのように歪んでいる様子が観測される
■その過程で、惑星の表面の大気層から鉄やマグネシウムなどの重い元素が熱で蒸発して、宇宙空間に流出していた
■「ホット・ジュピター」という群に分類され、木星と同等の質量でありながら主星との距離が近いことで表面温度が高くなることを特徴とする
「WASP-121b」という既知の太陽系外惑星が、アメフトボールのように歪んでいることをアメリカ・ メリーランド大学の研究チームが発見しました。
この惑星の発見自体は2015年になされており、主星の周囲を公転する巨大なガス惑星となっています。
今回、NASAのハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測により、WASP-121bが主星の強力な重力によって表面が引っ張られ、楕円形に変形していることが明らかになりました。
さらにその過程で、惑星表面から鉄やマグネシウムといった重元素が宇宙空間に流出していることも判明しています。
研究の詳細は、8月1日付けで「The Astronomical Journal」に掲載されました。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ab2986
「ホット・ジュピター」の中でも異例
WASP-121bは地球から約900光年離れた場所に位置しており、木星の約1.2倍の質量と約1.8倍の半径を誇る大きな惑星です。そしてWASP-121bは「ホット・ジュピター」という惑星群に分類されています。
ホット・ジュピターとは、木星と同等の質量を持ちながら主星との距離が近いために、表面温度が非常に高温となっている太陽系外惑星のことです。実際、WASP-121bは主星からおよそ380万km離れた軌道をわずか1日ほどで公転しています。
しかし主星との距離が近すぎることでWASP-121bの表面温度はおよそ2500度以上にまで達しているのです。これは一般的なホット・ジュピターの平均温度の10倍にも及ぶのだそう。
そして重要なことは表面温度の高さと主星の重力の影響で、表面大気層に含まれる鉄やマグネシウムなどの重元素が蒸発して、宇宙空間に飛び出しているということです。
研究主任のデヴィッド・シン氏によれば、ホット・ジュピターにおいてこのような重元素の放出現象が見られるのは今回が初めてとのこと。普通のホット・ジュピターは惑星内の重元素を放出することなく、それらを雲として凝縮し、大気中に残すには十分なほどの低温を保っているのです。
こうした例外的な現象についてシン氏は「主星との距離が近いこととその重力が強いことに加えて、惑星自体の重力がサイズに比して弱いことも原因となっている」と指摘します。
そのためWASP-121bの表面大気はどんどん大気が剥ぎ取られている状態にあるのです。このまま主星に近づいていってタッチダウンなんてこともありうるかも…?