意図に基づく道徳的判断にはより多くの認知的努力が必要
2つ目の実験では、被験者は4つの異なるシナリオを示されました。1つ目は、怠慢によって偶発的な害が生じるケースです。
実験の結果、若者が怠慢を伴わない行動よりも怠慢を伴う行動をより厳しく非難するのに対して、高齢者はこれらを同等に非難することが明らかになりました。
ゲイペル氏は、この現象が年齢を重ねるにつれて人の認知機能が低下することに関連しているのではないかと考えています。
意図に基づいて道徳的判断を下すことは、単に結末を非難することよりも、多くの認知的努力を必要とします。高齢者は若者と比べて意図を考慮することをより心理的負担が大きいと感じるため、意図せずしてもたらされた害であってもついつい非難しがちになるのでしょう。
これらの発見は、特に法律制度において重要な示唆を含んでいます。たとえば、他者が有罪であるかどうかを評価しなければならない陪審員には、意図を考慮することが求められます。
高齢者は非難されている人物が持つ意図に注意を向けることが少なく、その人物がもたらしたネガティブな結末に強い関心を向けがちなのですね。
年を重ねるほどに、他者に手厳しく「有罪判決」を下してしまう…。こうした高齢者の認知の仕組みの理解は、介護や医療の分野へも活用できることでしょう。