地球のセメントと異なる性質を持つ
まず、宇宙セメントは、地上のセメントよりもはるかに均一な密度を誇ります。地上セメントは、強い重力により重い物質は下方に沈降して、層状の性格を発達させます。
しかし、宇宙セメントは微小な重力により、沈降現象が起きず、密度が均一に保たれるのです。研究主任のアレクサンドラ・ラドリンスカ氏は「密度が均一であればあるほど、セメントの強度も増す」と言います。
その一方で、宇宙セメントは、生成過程で多くの気泡を発生させ、より多孔的な性質を持つことが分かりました。
地上であれば、浮力によってセメント内部の気泡も自然にセメント表面へと上昇します。ところが、宇宙セメントは、やはり微小重力が災いして、浮力が働かず、気泡もセメント内部に留まってしまうのです。
ラドリンスカ氏は「セメントの多孔性は、強度が落ちる原因となる」と指摘します。
つまり、宇宙セメントは、「均一な密度」という強度が高くなる性質と「多孔性」という弱くなる性質とを持っているというわけです。地上セメントと宇宙セメントの強度の優劣は、今後の実験で明らかにされます。