ブラックホールには毛が無い!?
一般相対性理論によれば、この絡まりあった重力波にはブラックホールの質量とスピン(角運動量:自転速度)に関する情報が含まれているはずだと予測されています。
元々天体は、物質の化学的組成、温度、形などの物理的な性質を多数持っています。しかし、ブラックホールになったとき、こうした性質の殆どは消え去ってしまい、質量と自転(角運動量)、電荷という3つの情報しか持たない状態になってしまいます。
このことをアメリカの物理学者ホイーラーは「ブラックホールには毛が(3本しか)ない」と表現しました。
なぜ髪に例えた? と言いたくなりますが、このホイーラーの発言がきっかけで、ブラックホールが物理的性質の多くを失うことは「ブラックホール無毛定理(または脱毛定理)」と呼ばれています。毛が3本ということで、日本では「オバQ定理」と呼びたがる人も多いようです。
これは逆に言うと、まったく観測が不可能に見え、あらゆる情報が事象の地平面へと消え去っているように見えるブラックホールでも、重力波を測定することでその質量や自転速度を計測することが可能ということを示しています。
もちろんこれは、一般相対性理論から導かれる予想でしかありませんでした。
しかし、今回の研究は、ブラックホール衝突による重力波から異なる成分を識別することにより、新しく生まれたブラックホールの質量とスピンを測定することができ、ブラックホール無毛定理が正しいことも証明できたのです。
下の動画は、ブラックホールの重力波を音に変換した動画です。
ブラックホールの放つ重力波を音に直して解析するなんて、なんとも天文学はロマンチックですね。
論文筆頭著者の所属研究所名に誤りがあったため、修正して再送いたします。