万能薬になるか? 驚きのRESTの効能
神経興奮に作用する遺伝子を抑制すると明らかになったRESTですが、Natureに掲載されている他の研究ではアルツハイマー病を予防する作用があるという報告もされています。
アルツハイマー病を発症した人の脳ではRESTの量が低下していたというのです。
こうしてみると、RESTはアルツハイマー病を抑え、神経興奮も抑制して、長寿を維持できる万能のタンパク質であるように見えます。
しかし、RESTを誘導するのは老化によるストレスが原因と言われており、単純に高齢になるほどRESTの量が増加しているだけの可能性も捨てきれません。
研究対象にされている脳は、様々な要因で死亡した人々から提供されているものなので、REST濃度差が直接死亡に関連しているかどうかは明言できないのです。
生きている人間の脳を解剖して調査することはできないので、この辺りの判断は医学的にも難しい領域です。
しかし、ワームやマウスを使った実験では明らかな結果が示されており、RESTをターゲットとした薬物開発が、神経の興奮を減らし、健康な老化を促進して寿命を伸ばす可能性はあります。
こうしたRESTの有用性を判断するにはまだまだ長い時間が掛かるといいますが、脳神経の興奮と寿命の関連が魅力的な研究テーマになったことは確かなようです。
世の中にはすぐ頭に血の昇る高齢のクレーマーが多いなんて話題も耳にしますが、寿命に関係するかどうかは別として、神経を昂ぶらせるよりは穏やかな老後を送りたいものですね。