Point
■60代から100歳以上までの、脳バンクに提供された脳組織を分析したところ、長寿の人は脳神経を活性化させる遺伝子の発現が低いことが明らかとなった
■脳神経の興奮が老化や寿命に影響している可能性があり、これを制御しているのがタンパク質のRESTであると判明した
■RESTはアルツハイマー病の抑制にも効果のあることが報告されており、これを利用した薬を開発することで脳の状態や寿命を大きく改善できる可能性がある
大人の脳は使わなければどんどんと細胞を喪失していくため、活動させ続けることが必要だと言われています。
これは直感的にもわかりやすい説明です。しかし、新たな研究は脳の過剰な活性化は逆に寿命を縮める結果になる可能性を指摘しています。
さらに、そうした神経興奮を抑制するタンパク質もこの研究では特定しており、この成果は寿命の改善につながる可能性があります。
この研究は、ハーバード大学医学部の研究チームより発表され、10月16日付けで総合科学ジャーナル『Nature』に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1647-8
脳の活性が寿命を縮める?
今回の研究で調査されたのは、死後に脳バンクに提供された60代から100歳以上の人たちの脳です。
この調査で、85歳以上の人たちは、60〜80歳で亡くなった人たちに比べて神経興奮に関する遺伝子の発現が低かったという結果が得られました。
また、分子レベルでの違いを調査した結果、遺伝子を制御するタンパク質「REST」に差があることも明らかになりました。100歳以上の人は、70代80代で亡くなった人よりも脳細胞の核内にかなり多くのRESTがあったのです。
この結果から、研究者たちはマウスとワームを使い、RESTの量を変化させた場合に、どのような症状が現れるかの実験を行いました。
すると非常に寿命が長いとされるMethuselahワームでは、RESTを増加させた場合、脳活動が減少し、寿命が延びる傾向が見られました。逆にRESTを減少させるとワームは神経活動を増加させて、劇的に寿命が短縮されたのです。
マウスの実験では、RESTを欠いた状態だと、発作のような活性化が度々起こり、多忙な脳活動を行う傾向が見られるようになりました。
これは制御不能な過剰な神経の興奮を示すもので、当然脳には良くありません。
この結果からタンパク質RESTは、神経興奮や脳の活性化に関する遺伝子発現を抑制することが明らかになりました。
また、RESTの作用によって神経興奮を減少させることで寿命を伸ばすことができる可能性も出てきたのです。