- 110億光年離れた銀河「サンバースト・アーク」は重力レンズ効果によって、同時に12個も見ることができる
- これは両者のほぼ中間にある巨大銀河団の重力の影響によるもの
- この銀河は謎の多い初期宇宙の「再イオン化時代」以前に生まれたと考えられ、古代宇宙の貴重な情報源となる
画像はハッブル宇宙望遠鏡により撮影された「サンバースト・アーク」と呼ばれる銀河の画像です。
どれが? と戸惑ってしまいますが、実は画像の右上と左下に写る点線のように見える4つの弧がそれにあたります。右上に3つの弧が写っていて、左下の弧は天の川銀河の明るい天体に半分隠れてしまっています。
サンバースト・アーク銀河は110億光年も離れた場所にある小規模な銀河ですが、46億光年離れた距離にある巨大銀河団の重力によって光が歪み、4つに別れた弧の中に写っているのです。
しかも該当の銀河はこの弧の中に12個も同時に見えているのです。
なんともすごい重力の効果。しかもこの銀河は、重力レンズの集光効果がなければ本来は見えない銀河なのだそうです。
この観測に関する論文は、ノルウェー・オスロ大学の研究者を筆頭とした天文学の国際研究チームにより発表され、11月8日付けで科学誌『Science』に掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/366/6466/738
分裂した遠方銀河
サンバースト・アーク銀河は110億光年も離れている上、そのサイズは直径520光年というとても小規模な銀河です。
私たちの属する天の川銀河の直径が10万光年以上あることを考えると、これは非常に小さい構造体と言えます。
そのため、本来なら地球から観測することは難しい天体です。しかし、幸運にもこの銀河と地球の間には巨大銀河団が存在しており、その重力によってサンバースト・アーク銀河の光を大きく歪めると同時に集光してくれたため、その姿をハッブル宇宙望遠鏡で観測することができるのです。
上の画像は画像に写る弧の1つを拡大したものです。ここにはサンバースト・アーク銀河が6つも写っているといいます。
重力レンズ効果は私たちが虫眼鏡や望遠鏡を使った場合と同様のものです。凸レンズを通したときの様に、光の経路を曲げて集光します。
これが何万光年もある宇宙規模で起きるため、非常に遠方の僅かな天体の光さえ集めて巨大な望遠鏡として機能するのです。
下の動画はESA(欧州宇宙機関)が作成した重力レンズ効果のイメージをアニメーションにしたものです。この動画を見ると、今回の銀河がなぜ複数の弧に歪んで写るのかがよくわかります。