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ブラックホールが生み出す新しいタイプの「惑星」とは?
私たちの属する太陽系を含め、惑星は恒星の周りに集まった塵やガスによる原始惑星系円盤から誕生しています。
原始惑星系円盤にはマイクロメートルサイズのダスト(塵)があり、これが温度の低い場所では氷をまとった状態になっています。これがぶつかり合うと氷同士がくっついて、次第に大きな塵を含む氷の塊ができていきます。
この集合体は、塵の間に隙間がたくさんあるため「ふわふわダスト(高空隙率ダスト)」と呼ばれています。
このふわふわダストは、更にぶつかり合うことで、その衝撃と自重により隙間がつぶれていき、数センチメートルだった塊は数キロメートルサイズの高密度の巨大な微惑星に成長していきます。
これが、中心星から離れた温度の低い場所で惑星が形成されていく原理です。
今回研究者たちは、「こうした惑星形成の条件がブラックホールの周囲で満たされることはないだろうか?」と考え、研究を進めました。
ブラックホールはとてつもない重力を生む天体です。その周りを囲む降着円盤は、塵やガスが高速で回転し激しい摩擦を起こしているため、非常に高熱で強力な放射線を放っています。
しかし、ブラックホールから10光年くらい離れると、強力な重力の影響も弱まり低温の状態になります。ここにはタバコの煙粒子くらい細かなダストによるドーナツ型の雲ができます。これをダストトーラスと呼びます。
この雲の中には氷ができるほど低温になる境界(雪線)があり、ここを超えるとダストは氷つくため、ふわふわダスト理論による惑星形成が可能な状態になると考えられるのです。
通常恒星の周りにできる惑星の数は10個程度です。しかし今回想定している活動銀河核の周囲は、「惑星」の材料となる塵が豊富なため、理論通りに「惑星」が形成された場合1万個近くが回っている状態になります。
ブラックホールの規模にもよりますが、この「惑星」ができるまでに掛かる時間は数億年程度だといいます。