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Credit:NAOJ,鹿児島大学
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巨大ブラックホールを中心に回る、まったく新しい「惑星」系が存在した

2019.11.26 Tuesday

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  • 活動銀河中心の巨大ブラックホールで、まったく新しい「惑星」種族が形成されている可能性が示された
  • 活動銀河核の周辺は材料が豊富なため、地球質量の10倍ある「惑星」が1万個以上形成されている
  • 理論上ブラックホールから約10光年ほど離れた場所で形成されるため、「惑星」への巨大重力の影響は少ない

「惑星は恒星の周囲を回っている天体」というのは、天文学を超えて一般常識と言える知識です。

惑星たちは恒星の回りに集まったガスや塵が元になって形成されます。私たちの属する太陽系もその原理に従って誕生しました。そして太陽系外惑星も1955年以降、3000近く発見されています。

しかし、恒星の回りに惑星が形成されるならば、似たような条件のもっと違う場所でも惑星が生まれる可能性はないのでしょうか? そう例えばブラックホールです。

巨大ブラックホールの周囲でも若い恒星と同じく、豊富な塵が渦巻いています。

そんなことを考えた日本の研究たちによって、ブラックホールの周囲でこれまでまったく考えられていなかった新しいタイプの「惑星」が存在する可能性が、今回理論的に提唱されました。

恒星の周りを回らない惑星というものは、現在のところ想定されていません。まったく新しい天体で適切な呼び名がないため、この天体に言及するとき研究者たちは「」(カギカッコ)を付けて暫定的に「惑星」という呼び方をしています。

「惑星」の存在を示したこの研究成果は,鹿児島大学、国立天文台の研究者チームより発表され、アメリカ天文学会誌「Astrophysical Journal」11月26日号に掲載予定です。現在はプレプリントサーバー「arXiv」で確認できます。

Planet Formation around Super Massive Black Holes in the Active Galactic Nuclei https://arxiv.org/abs/1909.06748

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ブラックホールが生み出す新しいタイプの「惑星」とは?

巨大ブラックホールとそれを取り巻くトーラス雲の想像図
巨大ブラックホールとそれを取り巻くトーラス雲の想像図 / Credit:鹿児島大学

私たちの属する太陽系を含め、惑星は恒星の周りに集まった塵やガスによる原始惑星系円盤から誕生しています。

原始惑星系円盤にはマイクロメートルサイズのダスト(塵)があり、これが温度の低い場所では氷をまとった状態になっています。これがぶつかり合うと氷同士がくっついて、次第に大きな塵を含む氷の塊ができていきます

この集合体は、塵の間に隙間がたくさんあるため「ふわふわダスト(高空隙率ダスト)」と呼ばれています。

このふわふわダストは、更にぶつかり合うことで、その衝撃と自重により隙間がつぶれていき、数センチメートルだった塊は数キロメートルサイズの高密度の巨大な微惑星に成長していきます。

これが、中心星から離れた温度の低い場所で惑星が形成されていく原理です。

今回研究者たちは、「こうした惑星形成の条件がブラックホールの周囲で満たされることはないだろうか?」と考え、研究を進めました。

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(左)恒星周囲の原始惑星系円盤で惑星が形成される様子。(右)ブラックホール周囲のダストトーラスで「惑星」が形成される様子。どちらも片側の断面図。/Credit:国立天文台,鹿児島大学

ブラックホールはとてつもない重力を生む天体です。その周りを囲む降着円盤は、塵やガスが高速で回転し激しい摩擦を起こしているため、非常に高熱で強力な放射線を放っています。

しかし、ブラックホールから10光年くらい離れると、強力な重力の影響も弱まり低温の状態になります。ここにはタバコの煙粒子くらい細かなダストによるドーナツ型の雲ができます。これをダストトーラスと呼びます。

この雲の中には氷ができるほど低温になる境界(雪線)があり、ここを超えるとダストは氷つくため、ふわふわダスト理論による惑星形成が可能な状態になると考えられるのです。

通常恒星の周りにできる惑星の数は10個程度です。しかし今回想定している活動銀河核の周囲は、「惑星」の材料となる塵が豊富なため、理論通りに「惑星」が形成された場合1万個近くが回っている状態になります。

ブラックホールの規模にもよりますが、この「惑星」ができるまでに掛かる時間は数億年程度だといいます。

次ページどんな惑星が存在するの?

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