- 死んだサンゴ礁で、健康時のサンゴ礁の音を流すことにより、魚たちが集まってくることが判明
- 集まった魚がサンゴ礁のゴミを掃除し、再び成長するためのスペースを作ることで、サンゴは復活する
サンゴ礁は海中生物にとって不可欠な生態系で、「海の森」とも呼ばれています。
しかし近年、温暖化や過剰な漁業、海水汚染により、世界中のサンゴ礁が被害を被っています。このまま荒廃が進行すれば、サンゴ礁はおろか、海の生物まで消えてしまうかもしれないのです。
しかし今回、イギリスのエクセター大学などの共同研究により、死んだサンゴ礁の一画に、健康なサンゴ礁の音を流すという斬新な保全方法が発見されました。
研究の詳細は、11月29日付けで「Nature Communications」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-13186-2
生物種も50%増加
実験が実施されたのは、サンゴ環境の荒廃が進んでいるオーストラリアのグレートバリアリーフです。研究チームはそこで、すでに死んでいるサンゴ礁の一画に、健康なサンゴ礁の音を録音したスピーカーを設置し、音を流しました。
その結果、スピーカーを設置していない場所よりも2倍以上の魚が集まり、さらにそこを居住地にしたのです。
研究主任のティム・ゴードン氏は「健康なサンゴ礁は、魚の群れやパチパチ音を鳴らすエビのおかげで賑やかな場所となっており、この音を目印にして、特に若い稚魚たちが集まってくる」と説明します。
ただし、魚が集まるだけでは、死んだサンゴ礁が元に戻ることはありません。しかし魚たちは、サンゴ礁に溜まったプランクトンなどを食べて掃除し、サンゴが再び成長するためのスペースを作ってくれるのです。
「魚や他の水生生物は、サンゴ礁が健康な生態系として復活するために必要不可欠な存在です」とゴードン氏は指摘します。
実験では、魚数の増加だけでなく、サンゴに集まる水生生物の種類も50%増やすことに成功しています。中には、食物連鎖に必要な生物種が含まれており、すでに新しい生態系が作り出されています。
もちろん、サンゴ礁の完全な復活と保全には、この方法以外に、温暖化や汚染問題の解決に取り組まなければなりません。
ゴードン氏は「この音響効果が、サンゴ礁の環境を守るための第一歩となることに期待している」と話します。