
- 新たに開発された「マイクロチップ型人工ニューロン」は、神経システムからの電気シグナルに適切に応答する機能を持つ
- 人工ニューロンにより、心不全やアルツハイマーなど神経性疾患への治療が可能になる
世界初となるマイクロチップ型の人工ニューロンが、イギリス・バース大学により開発されました。
今回開発された人工ニューロンは、正常な神経の働きを忠実に再現することで、神経システムから発される電気信号に対して適切に応答できるとのこと。
これにより、異常を起こした神経組織での幅広い治療が期待されます。
研究の詳細は、12月3日付けで「Nature Communications」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-13177-3
「電気シグナル」への応答を可能に
人工ニューロンの主な役割は、本物の神経システムから出される電気シグナルに対し、正確に反応することです。神経性の病気は、この反応ができなくなることで生じます。
例えば、心不全では、脳のニューロンが神経システムから来る合図に応答しないため、正しいシグナルを心臓に送ることができず、機能不全を起こすのです。
つまり、人工ニューロンの仕事は、合図に対し正確に反応することにあります。

一方で、人工ニューロンの開発は、神経システムの複雑さから困難を究めました。
特に神経反応は、システムからの電気シグナルが2倍強くなっても、必ず2倍の反応が返ってくるとはかぎらず、ときには3倍にも4倍にもなるため、予測が難しいのです。
それでも、研究チームは、電気シグナルに対するニューロンの応答方法をモデル化することに成功しています。

具体的には、シリコン製のマイクロチップを用いて、ニューロン間の電気活動を担う「イオンチャネル」を模倣しました。実証テストの結果、シリコンチップ型ニューロンは、広範囲の刺激幅に対して正確に応答できることが証明されています。
また、人工ニューロンに必要な動力はわずか140ナノワットであり、これはマイクロプロセッサの10億分の1に当たる数値です。
研究主任のアラン・ノガレット氏は「動力を最小限に抑えることは、医療用のインプラント機器に最適である」と話します。

現在、チームが開発を進めている「高性能ペースメーカー」は、人工ニューロンによって、心臓が一定の速度で鼓動するように刺激を与えるだけでなく、心臓に送られる要求にリアルタイムで応答できます。
ノガレット氏は「人工ニューロンを使えば、これまで対処できなかった多くの神経性疾患に対処できるだろう」と述べています。将来的には、患者の脳内に人工ニューロンチップを挿入し、神経システムの機能不全への対処や病気で失われた機能の調節を目標としているそうです。
人工ニューロンは、心不全やアルツハイマー、無呼吸症候群、その他、神経退化に伴うあらゆる病気に対応することが期待されています。インプラント治療に大きな革命が起きるかもしれませんね。