- シャチにも人間と同じように「おばあさん効果」があることが判明
- 祖母のシャチは、狩りの知恵の伝授や孫の世話などを担当することで、グループの生存率を高めていた
繁殖期間を終えたメスは、基本的に先が長くありません。しかし中にはヒトのように、閉経後も長生きする生物が少ないながらも存在します。
これは「おばあさん効果」と呼ばれており、祖母が孫の世話や家族の手助けなど新たな役割を持つことで、長生きに繋がっているという仮説です。
ヒトを含む哺乳類において、おばあさん効果を持つ動物はきわめてまれですが、今回、ヨーク大学(英)の研究により、シャチのメスにもおばあさん効果の存在が認められました。
研究主任のダン・フランクス氏によると、「祖母のシャチのおかげで、グループの生存率が格段に上がっていた」とのことです。
研究の詳細は、12月9日付けで「PNAS」に掲載されました。
https://www.pnas.org/content/early/2019/12/03/1903844116
祖母のおかげでグループの死亡率が低下
シャチのメスは、だいたい30〜40代で生殖期間を終え、閉経に入ります。しかし、その後も20年近く生き続け、最大で80〜90歳まで生きる個体もいるのです。
研究チームは、シャチのおばあさん効果を特定するため、北太平洋沿岸に生息するシャチ・グループについての36年に及ぶデータを分析しました。
その結果、祖母の死後2年以内のグループは、死亡率が、祖母の生きているグループよりも5倍近く高いことが判明しています。特に、シャチが好物としているキングサーモンの数が少ない時期に祖母がいないと、グループ内の孫の生存率が低下していたのです。
反対に、祖母が生存していると、若いシャチの生存率も格段に上がっていました。これは、シャチの祖母がハンティングに関する知識を用いて、群れを統率していることが原因と見られます。
閉経後も長く生きる哺乳類は、現在のところ5種類のみ確認されており、ヒト・ゴンドウクジラ・シロイルカ・イッカク、そしてシャチです。
フランクス氏は、これら5種類に共通する点について、「祖母・母・子が、生涯離れることなく、一緒に暮らす生活構造を持っていること」と指摘します。
つまり、繁殖期を終えた祖母も、母シャチが狩りに出ている間に孫の面倒をみたり、グループに狩りの知識を教えたりと重要なポジションを確保しているということです。
弱肉強食の世界を生き残るには、やはり家族の強い結びつきが必要なのでしょう。