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火星の夏は一日中「陽子オーロラ」が出現すると判明

2020.01.03 Friday

オーロラといえば、地球では極点近くの寒い場所で時折見られる、美しい光のカーテンというイメージですが、これは太陽風で運ばれたプラズマの電子が地球の磁気圏にぶつかって起こっているものです。

火星は、磁場を発生させるコアが死んでいるので、地球のようなオーロラを作ることはできません。しかし、実は太陽風で運ばれた陽子によって陽子オーロラを発生していることが火星探査機「メイブン」の観測から明らかになっています。

これはとても稀な現象と考えられていました。しかし、新たな研究は、この火星の陽子オーロラが、夏の期間中は昼間にほぼ100%の発生率で見られる現象であると述べています。

夏の火星は、紫外線を感知するカメラを通してみれば昼間にオーロラで輝く姿ずっと見られるようです。

この研究は、米国フロリダ州のエンブリー・リドル航空大学のAndréa Hughes氏を筆頭とした研究チームより、アメリカ地球物理学連合の会議で発表され、論文は「JGR Space Physics」オンライン版に掲載されています。

Newfound Martian Aurora Actually the Most Common; Sheds Light on Mars’ Changing Climate https://www.nasa.gov/press-release/goddard/2019/mars-proton-aurora-common Mars’ magnetic field https://www.space.dtu.dk/english/Research/Universe_and_Solar_System/magnetic_field
Proton Aurora on Mars: A Dayside Phenomenon Pervasive in Southern Summer https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2019JA027140

火星になんでオーロラができるの?

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Credits: NASA/MAVEN/Goddard Space Flight Center/Dan Gallagher

火星のコアは流動性が失われているため、惑星自身が作る磁場はありません。しかし、それは惑星に磁気圏が存在しないということではありません。

磁力線は太陽風によって太陽系内を走っています。それは当然火星にもぶつかりますが、磁力線は伝導性を持つ惑星の中を突き抜けて通ることが出来ません。そのため惑星の外側を避けるようにして通り抜けることになります。

地球に比べればはるかに弱く単純なものですが、これが火星の磁気圏として機能します。この磁気の境界を「バウショック」と呼びますが、この境界で火星を太陽風運ぶ荷電粒子の直撃から守っています。

そんな火星ですが、上層には水素雲が存在しています。この水素雲は大気圏の外側、さらにミニ磁気圏の外側まで広がっていることがあります。

太陽風は電子と陽子がバラバラに分かれたプラズマ(荷電粒子)が飛ばされてきますが、これが火星の水素雲にぶつかったとき、陽子は水素から電子を奪って一時的に中性原子(水素)に戻ります。

電気的に中性な水素に変わったこの粒子は、磁気バリアとなっているバウショックをあっさり通過して、太陽風で飛ばされた時速160万キロメートルという勢いのまま火星の大気圏へ突入します。そして大気中の分子と勢いよく衝突するのです。

基本的に原子内の電子は高いエネルギー状態を好みません。高速の中性水素は大気中の分子と衝突することで、そのエネルギーの一部を紫外線として放出することになります。

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紫外線分光器で観測した火星の陽子オーロラ。/Credits: Embry-Riddle Aeronautical University/LASP, U. of Colorado

これが火星の空に紫外線のオーロラが発生する原理です。陽子が引き金になっているので、こうしたオーロラは陽子オーロラと呼ばれます。

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