火星になんでオーロラができるの?
火星のコアは流動性が失われているため、惑星自身が作る磁場はありません。しかし、それは惑星に磁気圏が存在しないということではありません。
磁力線は太陽風によって太陽系内を走っています。それは当然火星にもぶつかりますが、磁力線は伝導性を持つ惑星の中を突き抜けて通ることが出来ません。そのため惑星の外側を避けるようにして通り抜けることになります。
地球に比べればはるかに弱く単純なものですが、これが火星の磁気圏として機能します。この磁気の境界を「バウショック」と呼びますが、この境界で火星を太陽風運ぶ荷電粒子の直撃から守っています。
そんな火星ですが、上層には水素雲が存在しています。この水素雲は大気圏の外側、さらにミニ磁気圏の外側まで広がっていることがあります。
太陽風は電子と陽子がバラバラに分かれたプラズマ(荷電粒子)が飛ばされてきますが、これが火星の水素雲にぶつかったとき、陽子は水素から電子を奪って一時的に中性原子(水素)に戻ります。
電気的に中性な水素に変わったこの粒子は、磁気バリアとなっているバウショックをあっさり通過して、太陽風で飛ばされた時速160万キロメートルという勢いのまま火星の大気圏へ突入します。そして大気中の分子と勢いよく衝突するのです。
基本的に原子内の電子は高いエネルギー状態を好みません。高速の中性水素は大気中の分子と衝突することで、そのエネルギーの一部を紫外線として放出することになります。
これが火星の空に紫外線のオーロラが発生する原理です。陽子が引き金になっているので、こうしたオーロラは陽子オーロラと呼ばれます。