ウィルスを使ったウィルス対策
今回の研究では、調査されたのが11種類のウィルスで、明確な関係性を見出だせたのはA型インフルエンザとライノウィルスだけでした。他のウィルスは宿主レベルで見られる傾向と、集団レベルで見られる傾向に一貫性がなかったといいます。
しかし、これまでの研究では、個々のウィルスの性質にばかり着目していて、異なるウィルス同士の相互作用はあまり研究されていませんでした。
もし、感染部位に競合関係を持つウィルスや、同じ免疫反応で撃退されるウィルスなど、彼らの相互作用についての理解が深まれば、ウィルスの流行に関するもっと正確な予測や、または流行の抑制や制御が可能になるかもしれません。
危険なウィルスの感染を抑えるために、ずっと弱毒のウィルスを使うことで対処できる可能性もあります。危険なウィルスの流行に対して、一定数感染を免れる人たちがいる理由も、こうしたところに隠れているのかもしれません。
ウィルス同士の相互作用はまだ着目されたばかりで、これから研究が進んでいく分野です。
あるウィルスに感染していたことで、他の病気に対するリスクが減るという関連性が分かれば、私たちの健康管理もずっとやりやすくなるでしょう。今後に期待したい研究です。
この論文は、スコットランドのグラスゴー大学パブロ・ムルシア博士を筆頭とした研究チームより発表され、12月16日付けで、米国科学アカデミー発行の機関誌『PNAS』に掲載されています。
https://doi.org/10.1073/pnas.1911083116