
- 過去200年の間に、人の体温が下がっていることが判明(10年ごとに0.03°Cずつ低くなっている)
- 生活水準や衛生環境が向上したことにより、体内での炎症や生理的な体温上昇が減っていったことが主な要因
現代人の平均体温は多くが36.5度前後ですが、19世紀半ばでは37度が平熱とされていました。人の体温は時代の経過に伴い変化しているのです。
アメリカ・スタンフォード大学の新たな研究によると、人の体温は1800年代から徐々に低くなっていることが判明しました。
これは、生活スタイルの向上によって体温が意識的に調節できるようになったことが関わっているようです。
研究の詳細は、1月7日付けで「eLIFE」に掲載されています。
https://elifesciences.org/articles/49555
体温低下は生活水準が向上したため?
研究チームは、人の体温が低下していることを証明するため、過去200年ほどのデータをもとに調査しました。ここでは3つの時代区分に当たるデータが用いられています。
1つ目は、南北戦争北軍の退役軍人の体温データ(1860–1940)、2つ目は、アメリカで行われた第1回全国健康栄養調査のデータ(1971–1975)、3つ目はスタンフォード大学の医療調査データ(2007–2017)で、計20万人を越える体温データを調べています。
その結果、人の体温は10年ごとに0.03°Cずつ下がっていることが分かりました。

さらに、2000年以降に生まれた男性の平熱は、1800年代初めに生まれた男性より平均して0.59度低くなっており、2000年以降に生まれた女性の場合は、1890年代に生まれた女性より平均して0.32度低いことが判明しています。

この理由について、研究主任のジュリー・パーソンネット氏は「生活スタイルが向上したことによって、衛生状態が改善され、体温を自由に調節できるようになったことが要因」と指摘します。
人は細菌やウイルスに感染すると、体内で免疫システムを働かせ始めます。この際、免疫システムから生み出されるタンパク質が体温を上昇させます。要するに、体内で炎症が起きることで、体温が生理的に上がるというわけです。
おそらく、衛生状態の悪かった19世紀の人々は、現代人よりも炎症を起こす頻度が多かったのでしょう。
また、現代はエアコンやクーラーが普及したことで、体温を一定に保つことが可能になりました。このように、体温が外気に合わせて生理的に上昇する回数が減ったことも体温低下の要因となっているようです。