■精神病が人類進化の過程で生き残り続けているのは、生存において利益があるから
■マイナスな感情は、うまくいかない目標から一度身を離し、戦略を変えたりエネルギーを保存したりするのに役立つ
■遺伝子由来の疾患である「双極性障害」は子孫を減らすのではなく、逆に繁栄を促進した可能性がある
精神病は、人類が繁栄し続ける上で「必要」なのでしょうか?
アリゾナ州立大学の精神科医であるランドルフ・ネッセ氏は、進化の過程で精神病が生き残り続けている理由について、「人類にとって有益であるからだ」と答えました。
プラスに働く「マイナス感情」
現代、アメリカではおよそ5人に1人が精神疾患を患っており、私たちも生きていれば1度は何らかの精神病にかかると言われています。精神病には、心精神的な不安定性や行動意欲の減退、また最悪の場合は患者を自殺に追い込むこともあるほどです。
しかし、ネッセ氏によると、よく見られる「不安症」や「うつ病」は、進化の過程で人に有益に働いていたとのこと。同氏の著書『Good Reasons for Bad Feelings』の中では、マイナス感情における2つの有益な理由が説明されています。
1つ目は、「不利益な状況から身を離して、現在の戦略を変更させること」です。うまくいかないことばかりに没頭していると人は生きてはいけません。例えば大昔から人類は、狩猟にせよ採集にせよ、最初のターゲットを捕まえられなければ、別の動物や果実に狙いを変更します。
つまり、うまくいかない時に生じる「マイナス感情」は、切り替えをするための合図というわけなのです。
それから2つ目は「無駄な労力を費やさず、エネルギーを保存すること」です。これも同じようなことですが、エネルギーの無駄な消費は、種の生存において大きな損失となります。現時点で、目標達成の力が不足していれば、ハードルを少し下げてゴールを変更し直す方が得策でしょう。
要するに、マイナスな感情は、生存への立派な適応行動として機能しているのです。